イメージのしやすさ
「……まあ、匂いで個人を識別するとかならともかく、顔を認識するというのは理屈じゃないな……」
「ああ。そういったイメージが困難なものに関してはそう容易く魔法に落とし込む事は出来ない。逆に、水晶に遠くの景色を映し出すだとかならば魔術的に実現する事は可能だとされている」
「人間に想像出来る事なら実現出来るって事か?」
まあ、魔法らしいと言えばらしいとも言えるが……もっと法則的なものというか理論的な系統のものでは無いという事か?
「実際にそういう説を提唱する者は多いな。と言うのも、今まで実現不可能だとされていた魔法であっても、人類側の技術の進歩によって具体的なイメージを持つ事が出来るようになった事で実現した魔法がいくつかあるからな」
「例えばどういうのがあるんだ?」
「一番わかりやすいのは紫外線だろうな。かつてはそんなものが存在するとすら思われていなかったから認識する事も照射する事も出来なかったが……技術力の発展でそういうものが存在するとわかると、一瞬で実現する事が出来たとされている。もっとも……それ以前から太陽光を発生させる魔法そのものは存在したから、全く新しい概念的なものでは無いという指摘もあるにはあるがな」
紫外線か……確かに文明的知識無しに紫外線の存在に気が付くのは至難の業だろうな。赤外線はまだ熱に関連するものだから感覚的にそういうものがあるのだろうと想像しやすいのだろうが……紫外線の効果は肉眼では把握しにくいだろうな。
「太陽光は魔法で出せたのに、その光に紫外線が含まれている事はわかってなかったという事か?」
「そういう事だ。これが技術力の進歩によってそういうものがあるらしいと発覚し、紫外線を発生させる魔法や、紫外線を感知する魔法が開発されたりもした。さらに言えば、太陽光を発生させる魔法の難易度の簡略化にも成功したとされている」
「……より太陽光を具体的にイメージ出来るようになったからって事か?」
「その通りだ。……ただし、これによって逆に太陽光を発生させる魔法の取得が困難になってしまった魔術師というのも出て来るようになったとされている。つまり、知識が先行してしまってイメージが困難になってしまうという逆転現象も見られるようになってしまったわけだな」
……まあ、マクロな視点から物事を見極めるのと、ミクロな視点から物事を見極めるのには別の才能と言うか、資質のようなものが求められるだろうからな。木をイメージするにしても、森を見てイメージするのと、葉緑素やら光合成やらの知識からイメージするのとでは解像度は相当変わって来るだろうな。




