索敵の難易度
「……まあ、どんなに遠くの敵の位置がわかったとしても、そいつが動き続ける限りは命中させるのもそれなりの技量が求められるだろうからな」
「ああ。動かない的であっても、遠くにある程命中率は下がる。さらに言えば、索敵魔法であっても遠くのものほど誤差が大きくなる……場合がある」
オリヴィエは僅かに言いよどむ。どっちもありえるがどちらの方が主流なのかは良くわかっていないといった様子だ。
「普通に考えれば、遠くのものほど誤差は大きくなりそうなものだが……」
「普通に考えればその通りだが……空間魔法の場合はその限りでは無い。実質的に距離の概念が存在しないからな。それでも精度が落ちる場合がある。それは索敵範囲の大きさだ。より広い範囲を同時に索敵しようとすると、一気に精度が落ちる」
「……まあ、落ちるだろうな。一辺の長さが二倍になった立方体の体積は八倍になるからな。三乗倍になると考えれば難易度は文字通り指数関数的に跳ね上がるのだろうな」
まあ、これは容易に想像のつく話だな。
「そのため長距離の索敵は球体状やドーム状には展開せず、円錐状だったり、円柱状に展開したりする。……まあ、一度に索敵可能な体積は一定だと思えばわかりやすいか。他にも自分とは直接繋げずに、特定の場所に索敵範囲を展開するといった方法も存在する。私が武器を転送魔法で取り出せるのもこれがあるおかげだと言えるな」
なるほどな。アイテムボックスの中身を確認するため専用の魔法が個別にあるわけか。
「やはり、アイテムボックスはアイテムボックスだからという理由で索敵しやすいとかあるのか?」
「勿論ある。そもそもアイテムボックスにそれを補助する魔術的細工が施されているからな。そういった補助なしでの索敵は難易度が高い。この場合は僅かでも自分と直接繋がっている事が望ましい。そしてその形状はわかりやすい図形である事が殆どだな。因みに最も簡単とされているのが自分を中心とした球体だ」
オリヴィエが普段から展開している空間認識のための魔法だな。それが最も簡単だと言うのも頷ける。もしも難易度にそこまでの変化が無いのであれば、球体状にするよりも自分を中心に円盤状の索敵範囲を構築した方が便利な事が多いだろうからな。空を飛んで攻撃して来る奴がそんなに多いとも思えんからな。




