熱の入り方
「ああ。現状トップ層と言うのはほとんどメンツが固定されていて、お互いに手の内を把握した上で競い合う事になるからな。そのせいである程度人数が絞られてくると、競技の内容である程度の順位がわかってしまう層が出て来てしまうわけだ」
「五十人以内だとか三十人以内だとか言っても、優勝を狙えるか否かで考えれば明確に答えが出てしまう選手は山ほどいるわけか」
突如現れた天才だとか、奇跡的な出来事だとか、そういった一部の例外を考慮しなければ本当に優勝を狙えるであろう選手なんて片手で数えるくらいしかいないだろうからな。それ以外の大多数のエリート達は、優勝争いじゃなくて順位争いをしているわけだ。
「ああ。一般層から見ればトップ層なんてどれも同じレベルに思えるかもしれないが、それでもトップ層の基準で評価すれば明確なランクが細かく存在している。五十位だとか三十位だとか、そういった大まかな区分けでは無くもっと細かいランク分けだ。それこそ上位十人の中でさえ、上から数えた方が早いか下から数えた方が早いかで明確なランクが存在している。……まあ、このランクは競技の内容だとか、様々な不確定要素によって覆りうるがな」
一位や二位にいるような奴が十位近くまで落ちる事はまずないし、同様に十位前後にいるような奴が五位以内に入るような事も滅多に無いってわけか。
「大きい順位の変動はそう滅多に起こるものでもないってわけか。それだけこの大会の審査が正確とも言えるが……夢の無い話でもあるな」
「まあ、そう言うな。順位がある程度予想出来るからこそ、番狂わせが盛り上がるのだからな。それに、出場している選手達本人からしてみたら順位を一つ上げるために試行錯誤を繰り返して一喜一憂し続けているのだ。身近に一人でもそういうのがいるとかなり違って見えて来るらしいぞ。私にはわからないが」
「今年からわかるようになるかもしれんぞ」
今までは自分も含めて火霊祭には出場していなかったようだが、今年はフィリパが出場しているわけだからな。もしもこの競技を突破して、もっと上の順位を目指せるとなったら、熱の入り方も変わって来る事だろう。




