天才には勝てない
「なるほどな……自分の苦手分野は出ないって前提で考えているわけか。手堅く上を目指そうって発想じゃないな」
「ああ。上手く行けば今後の競技を圧倒的に有利に進められるが……裏目を引けば次の脱落候補になりかねないハイリスクハイリターンな選択肢だ」
上位を目指すだけならまず選ばない選択肢だが……もっと上の順位を狙うならどこかでリスクを負う必要はあるだろうからな……それがこの競技だと見極めたのか。
「頭の回る奴ほどリスクだとかそういったものがチラつくものだが……それを差し引いても上手く行った時のリターンが大きいと判断したならやって来るだろうな。そして、そのリターンは相応に大きいんだな?」
「ああ。次以降の競技に関わる話だから、百位以内である事を前提にした話ではあるが……つまり、五十位や三十位以内に入れるかどうかと考えるならその影響力は絶大だ。この辺りになってくると、我が国の重鎮レベルでもそうは見かけなくなってくる」
「そんなに珍しいのか……」
「何せそのレベルは常連だからな。順不同なら五年や十年は同じメンツが揃ってるなんて事があってもおかしくは無い」
順位の入れ替わりがそれだけ緩やかって事か。そして、それは別の見方をするなら一発逆転の要素がそれだけ少ないと言う事でもある。
「それだけ上と下で明確な線引きがあるってわけか」
「ああ。魔力の質と量、扱える属性の種類……適正……これらは持って生まれてくる才能だからな。それだけ才能の差というものが大きいと言うわけだ」
……まあ、そもそも使える魔法の属性が予め決まってるようなものだからな……しかも一つしか使えない奴もいれば幾つも使える奴もいると来たものだ。そりゃあトップ層の顔ぶれもそうそう変わる事は無いだろうな。
「一部の例外を除けば、トップになれる奴は予め決まっているようなものなのか。確かにそんな中で上を目指すとなったら、自分に都合の良い展開が起こるって前提で作戦を立てなきゃとても成り立ちそうにないな」
現実的に、手堅くと考えたらそれこそ『天才には勝てない』という至極妥当な結果に落ち着くだろうからな。それを覆して上を目指すとなると、多少無茶をしてでも倒せるうちに倒しておかないと後々手が付けられなくなるわけだ。




