安い買い物
「今回の醜態という記憶はいつか忘れ去られ、順位という記録だけだ残されるわけか。一年やそこらで周囲からの評価が回復するなら、安い買い物だな」
喉元過ぎれば熱さを忘れると言うが……この場合は違うか。
「ああ。今回のような事が何度も起きない限りはそこまで問題にはならないだろうな。安い買い物というのはその通りだ。もっとも……本来なら払わなくて良いものだから、安いかどうかはわからないがな」
得られる結果から考えたら安いが、そもそも支払わなくても良いと考えたら割高になるというわけか。
「まあ、完全に結果論の話になるが、あの問題でちゃんと正解を出せた奴と出せなかった奴には注意力だとか警戒心だとかで確実に何らかの違いはあるだろうし、周囲の人間から色々ととやかく言われるのは当然の支払いにも思えるがな」
正直、この手の試験ってのは本来の実力を発揮出来ていれば突破出来ていたハズってのが山ほどあるというのが容易に想像出来る。引っ掛け問題だとか、テストの解答が一問ズレてるとかそういうのだ。しかし、そういったミスを回避出来るかどうかも含めて実力と言う事も出来るからな……周囲の人間からとやかく言われるのはもはや受け入れざるを得ない代償と割り切るしか無いな。
「その代償が安過ぎるという理由での反発がありえるというわけだ」
「確かにあれだけの醜態を晒した人間がエリートの仲間入りをすると言うのは色々と反感を買いそうだな。これが一人や二人なら単なる笑い話で終わるところだろうが……半数以上だからな……」
流石にそれだけの人数にまで増えれば、個人の問題というわけでは無くなってくるな。それこそ社会問題として取り上げた方が良いレベルの決定的な問題点が浮き彫りになった瞬間とも言えそうだ。




