大会の存在意義
「実際のところ、あの問題は物議をかもす事になるだろうな。火霊祭の趣旨から考えたら、あの問題で間違えた選手は全員その場で失格にしてしまっても文句は言えないレベルの大失態だ」
「……何? 実はそこまで難しい問題でもなかったという事か?」
大勢の人間がそこまで難しくない問題を解けなかったというのは、確かに心情としては失格にしてしまった方が良いと思うのも頷けるが。
「いや、難しい難しくないで言うなら難しい難問に分類される問題のハズだ。あまり参考にはならないだろうが、私もわからなかったしな。ただし、だと言っても正解したのがあれだけというのはあまりにも不自然だ。あの大会に出場するレベルの選手があの問題を正解するのが五百人を下回るのはあまりにも少な過ぎる」
なるほど、あの程度の問題も解けないような奴が上の順位に行けるとなると、大会そのものの威信にかかわるというわけか。
「あの大会に出場するからには、あの程度の問題は難無く解いてもらわないと困るというわけか」
「それも勿論ある。……が、もっと問題なのは、恐らくだがあの問題を解ける者はもっと大勢いたハズだという事実だ。本来なら解けたハズの問題を、大勢の選手が間違えたというのが問題なのだ」
本来なら解けたハズ……? もっと考える時間があれば正解者はもっと増えたという事か? ……いや、違うな。そもそもあの問題でちゃんと『考えて』いた奴がいったい何人いたかが問題なのか。
「考える頭はあったのに、周囲に合わせて選択するだけで問題を解いていなかったというわけか」
「そうだ。元々火霊祭は賢者様の後継者を探す事を目的として行われた試験が始まりだ。そんな試験で自分で考える事を放棄するような選手が上位に……とても看過出来る出来事では無いだろうな」
確かに大会の存在意義が問われかねないな。




