あまりにも少ない解答者
「……まあ、確かに自分の直観より他人の解答を信じるってのは難しいかもしれないな。やはり優勝候補が偶然近くにでもいたのか?」
「それは本人に聞いてみない事にはわからんな」
「何にせよ、あれを突破出来たのは幸運だったようだな」
「幸運……という言葉ではとても言い現わせないな。ほぼ間違いなく脱落するであろう状況からストレートで突破出来たわけだからな。それに、他人と答えを合わせたと言っても、例の問題では優勝候補を含めて大多数の選手が間違っていた方を選んでいたのに、フィリパはそっちを選ばなかったわけだからな」
確かに……単に周囲の人間と合わせるだけでは間違いなく引っかかっていた事になるからな。
「自分が合わせると決めた選手が罠を仕掛けるタイプじゃなく、ちゃんと解答するタイプだったのも幸運だったと言えるだろうな」
「ああ。それも間違いなく幸運だったと言えるし、大勢の選手とは異なる解答を選ぶ事に迷いが無かったのも幸運と言わざるを得ないな」
確かに、フィリパと恐らく同じ事をしようとした選手は他にも山ほどいたわけで、その中でフィリパが競技を難無く突破出来たのは合わせる相手が引っ掛けのような行為をしなかったというのが大きい。
「自力で全問正解出来る者があの中に何人いたのかは知らないが、かなり少なかったのは事実だ。少なくとも五百人は下回っていたわけだからな」
そういう意味では、ある意味放送事故のようなものになっていただろうな。何せ世界一の魔術師を決めようという大会で、その大会の出場者の殆ど全員がまともに問題の答えを自力で選ぼうとしなかったというのだからな。
「世界中からエリートを集めた結果が、まじめに問題を解く奴が殆どいないという結果なのだとしたら、中々の決定的瞬間だったと言わざるを得ないな」
どれくらい難しい問題だったのかは俺にはわからないが、色々と禍根を残しそうな出来事だったな。




