ある意味とてつもない判断力
「……まあ、テストで百点取れるならカンニングする必要は無いわけだからな……それが出来れば誰も苦労はしないが」
「万に一つ、カンニングするにしてもギリギリまで勉強はするハズだが、あいつがノイローゼになったという話も聞かんしな。座学は無いと割り切って対策を立てていたのかもしれんな」
ノイローゼって……まあ、この大会のために本当にノイローゼになりながらも予選を突破していった連中はごまんといるのだろうな。
「全部に対して備えるってのは……まあ、無茶だろうな。そもそも風霊祭に出場しているんだから一つに集中する事は出来ていなかったハズだ」
「ああ。どう考えても時間が足りん。とてもではないが苦手分野を克服しているような猶予は残されていないだろうな。となれば、消去法で長所をより伸ばすという方向でしか大会に備える事は出来ないわけだ」
確かに、苦手分野の克服なんて普通の状況であっても時間なんていくらあっても足りない事になるだろう。ましてやその期限が直前にまで迫っているとなれば……まず間に合わないだろうな。
「そんな短時間で苦手を克服出来るなら皆やってるだろうし、仮に苦手を克服できたとして、その克服した後のレベルがこの大会に出場するのに見合ったものになっているかは別問題だしな」
「その通りだな。どんなに苦手を克服したところで、それが役に立つのは総合評価で足を引っ張る事が無いという点に関してだ。その分野で勝ち上がりを目指すとなったら……苦手を克服した程度じゃとてもあの大会を勝ち進める事は出来ないだろうな」
「そうなると、苦手分野が出たら潔く諦めるくらいの気持ちで出るしかなくなるな」
「座学が出た瞬間に諦めるというスタンスだったのがある意味で功を奏したのかもしれんな。完全に諦めたからこそ、自我を出さずに他人の解答に乗っかり続ける事が出来たのだろうな」
確かに……いくらわからない問題であったとしても、二択問題である以上は正解を引ける確率は五割だからな。運でも直観でも、正解を当てられる可能性は存在するわけだ。その可能性を一切排除した上で他人の選択に全てを委ねるというのは、ある意味ではとてつもない判断力と言わざるを得ないな。




