楽というわけではない
「いや、楽というわけでは無いが、やろうと思ってやれるのは外部との通信というだけだ」
「まあ、近くに全問正解出来る奴がいるってのは、偶然に頼る部分がどうしても出て来るからな……しかし、いないと言っても探す方法は何かしらあるんじゃないのか?」
遠くの人間と情報のやりとりをするのと、近くにいる人間を探し出す事、どちらが技術的に楽なのかは俺にはわからないが、どちらか片方が圧倒的に楽って事もないような気がするがな。
「それが知っている人間なら良いが、知らない人物だとするとその難易度は一気に跳ね上がるな。外部の人間との通話だって、知っている人間とするという前提ありきの話だ」
「なるほどな。確かに外部の人間と情報のやり取りをするなら、その人間とは知り合いだろうってのが前提になるだろうな」
見ず知らずの人間からの指示に従って競技を攻略していくって意味わからんからな。
「そういった点を考えて、外部の人間から指示を受けていたと考えた方が現実的だと考えたわけだ」
「現実的に考えて本当に実行出来るってわけか。運営だってそこら辺の対策はきちんとやってるように思うが……」
「そりゃあちゃんとやってるだろうな。だが、それはあくまでも民間レベルでの話だ。フィリパの兄上……フィリックス殿なら難無く看破してもおかしくはない」
「妹のためにカンニングの手伝いをしたってわけか」
「……そこだな。唯一のネックがそれだ。あの人なら運営の対策を看破してフィリパに指示を出す事が出来る。フィリパに協力する理由もある。それにあのくらいの問題ならば苦も無く全問正解するであろう頭脳まで持ち合わせている。だが、それだけにカンニングに協力するとはどうしても思えん。そんな事をするくらいなら全問正解出来るように勉強した方が効率が良いとまで考えそうなものだ」
……まあ、万に一つ発覚した際のリスクを考えればちゃんと勉強して全問正解した方が理論上は合理的ではあるな。そんな事が可能なのであれば……だが。




