上位者のプレッシャー
「格の違いか……世界中の人々がこの大会を観戦して、その結果が話題になる事を考えたら宣伝効果は絶大だろうな」
良い結果が出たら自分から宣伝しなくても……まあ、良い結果なら存分に宣伝するだろうが……とにかく地元民からの知名度は圧倒的になるだろうな。
「ああ。良い意味でも悪い意味でも世界中に知れ渡る事になるな」
「悪い意味で知れ渡ったら、とても外を出歩けるものではないだろうな」
「まあ、そこは周囲の人間からの期待のかけられ方によるだろうな」
「この大会で『勝って当たり前』と思われるような選手のプレッシャーは想像しがたいな」
もしも周囲の期待に応えられなかったら、次の大会までの一年間は周囲から何を言われるかわかったものじゃないからな。そして、じゃあ来年はプレッシャーを感じずに大会に出られるかと言われると決してそうはならないだろう。何せ一度のミスが原因でそんな重大な事に陥るなら、当然二年連続で不甲斐ない結果に終わったらどうしようという恐怖が付きまとう事になる。
「それこそ出た事のある者にしかわからんものになるだろうな。……いや、単に出るというだけでも足りぬか。期待された上で出るわけだからな。こればかりは私でも想像がつかん」
「今年の出場は見送ったわけだからな。……確か、火霊祭にはまだ一度も出た事は無かったんだったか? 国内予選に出た事も無いのか?」
「……ああ。無いな。出ても大した結果は出せないだろうという判断と……今年に関してはあえて出る必要も無いだろうという判断だ」
オリヴィエは一瞬、感情の読めない表情で俺を横目に見たが、その後すぐに視線を前に戻し、話をつづけた。
「その言い方だと、お前の自発的な意思じゃ無いな?」
「それはそうだろう。良い結果が期待出来ないから出ないなどと事もなげに言えるほど私は達観などはしていない。今回のだって、私は出ても構わないと思っていたが、その程度の意識なら出るなと言われたから出なかっただけだ」
まあ、オリヴィエは今年すでに別の大会で結果を出しているわけだからな。この大会で万に一つの事があってキャリアに変なキズが出来てもつまらん話だ。確固たる決意があるならそっちを尊重するだろうが、なんとなくのお試し気分で出られたら周囲の人間からしてみたら堪ったものじゃないな。




