主戦場はここではないどこか
「本当にこのブロック内で遠距離魔法の応酬があったのかどうかは正直言って微妙なところだろう。勿論、全く無かったという事は無いとは思うが……その規模は他のブロックと比較して小さいと考えられる」
そう言いながらオリヴィエは今回の競技の出場者の名簿を俺に見せる。
「……遠距離魔法を得意としている選手が少ないって事か」
「まあな。だが、少ないという事はそれだけ自分と同じ戦略で挑んで来る選手が少ないという意味でもある。つまりより一方的な試合運びが狙えるわけだな」
「ならなおの事遠距離魔法を連発してきそうなものだが……」
「だとすると、静かになるのが早すぎる。他のブロックで同様の事が起こっているのは、射程距離内の選手をあらかた倒し切ってしまったからだと想像出来るが、このブロックでそこまで圧倒的な遠距離魔法を扱える選手はいないハズだ」
「今も継続して戦っている可能性が高いわけだな? そしてその音がここまで聞こえてこないのは、単純にこの辺りにその選手がいないからだと予想出来るわけだ」
確かにこの辺りにそもそも他の選手がいないという状況から考えても、主戦場がここではないどこかになっていると考えられるな。そしてそっちで戦っているなら、この辺りに選手は少ない事になるし、当然、ここを待ち伏せしている選手はそもそもいないと考える事も出来る。
「それもあるし、開始直後に遠距離魔法を連発出来ないのにはもっと他の理由があるのだろう。序盤で場を制圧出来なければその生き残った戦力が一斉に襲い掛かってくる事になるのだからな」
確かに自分の射程距離より遠い場所から攻撃をしてくる敵なんて厄介この上ないからな。近くにいるとわかったら積極的に倒しておきたい相手だろう。つまり、倒し損ねれば損ねる程他の選手達からの集中攻撃を受けやすいというわけだ。




