本当に近くの出来事か?
「もしも一定以上の得点を取る事が無意味だとして……そのように判断した選手がいたとしたら、必要な分の得点を取った選手は今頃もう安全な場所に隠れているだろうな」
「その得点がいくつなのかは想像もつかんが……不必要な戦いを避けようとする選手はいるだろうな」
競技の開始直後に遠距離魔法で一気に制圧を仕掛けて来たのだとすれば、考慮しなければならないのは魔力切れによるピンチだ。当然この対策は何かしらしているのだろう。何らかの方法で身を隠しているのか、それとも他の選手と合流して守って貰っているのか。それともあるいは、完全に先行制圧して自分に向かって来る敵を倒し尽くしてしまうかだ。もっとも、最後のこれに関してはそこまで人数が減っていないのでやっていないか失敗したかのどちらかになるが。
「索敵と並行して遠距離魔法を連発したって事は、今かなりの魔力を消耗している状態って事だろ? 競技終了まで隠れるって事は無いにしても、魔力を回復させるまではどこかで休んでいる可能性は高いんじゃないか? それこそ他の選手と合流している可能性がありえる」
「当然その可能性もあるが……他にも考えなければならない事がある。そもそもこのブロック内で遠距離魔法を連発した選手が本当にいるのかどうかだ」
「どういう事だ? いるのかも何も競技開始直後にドンパチやり合っているのを聞いてなかったのか?」
「そのドンパチが本当にこのブロック内で行われたのか? という話だ。今私達は洞窟の中にいて、周囲の景色は見れない。さらに音だって聞き取りにくい道理だ。振動はどうだ? 本当に近くで遠距離魔法を連発しているような揺れはあったか?」
「それは……」
俺は思わず言葉に詰まってしまった。確かに轟音は間違いなく鳴り響いていた。この洞窟も……わずかにだが揺れていた。それらの事から近くで魔法の撃ち合いが発生したのは確実だ。……が、それがどれだけ近くで発生した出来事なのか? それが問題になって来る。つまり、隣のブロックで行われている戦いの余波を感じ取っているだけの可能性もあるわけだ。




