半径50メートルに敵無し
「まあ、あの人が勝ち上がるかどうかは競技が終わってからじゃないと確認のしようが無いからあまり気にしない方が良いだろうな」
「ああ。それよりも私達にとって重要なのは、ここから出るべきかどうかだ」
「一応聞くが、ここから半径50メートルの範囲に他の選手はいないし、空間魔法による干渉も無いんだな?」
「ああ。そういった反応は一切無い」
「だとすると妙だな……50メートルなんて短いようでかなりの距離だ。その範囲に人がいないってのはあり得るとして、空間魔法による干渉が無いなんて事があるのか? 山の頂上を空間魔法で確認するって事を誰もやってない事になるぞ」
正直、この状況で誰も認識出来ないという状況がにわかには信じがたい。まだ総攻撃を受けて洞窟から出るに出られないという状況の方が納得がいく。
「これは私も驚いている。空間魔法同士の干渉を恐れているのか……だとしてもおかしな話だ。そもそもいくら相互干渉によってお互いの存在を認識しても……それどころか、仮にその選手の位置を特定したとしてもだ。相手の射程距離よりも離れた場所、つまり自分の身は安全な場所で戦おうとしないのが意味がわからない」
確かに、あまり褒められた精神性では無いが、一方的に攻撃が仕掛けられる状況でそれをやらないのは解せないな。
「範囲やら射程距離に自信があるなら、その距離から戦えば良いだけの話だ。それとも、全方向への警戒のために気軽に遠距離攻撃は出来ないのか?」
「ならなおの事、山の上に移動した方が良いだろう。上も下も狙えるしな」
確かに取れる射角が広くなるのは有利に働くハズだ。そういう意味ではこの山の頂上を陣取らないのは勝ち筋を一つ減らしている事になってしまうが……オリヴィエが誰の存在も認識してないって事は頂上へ向かわない選手が大半って事になる。




