早すぎる中間報告
「……まあ、のめり込むと言っても、そこまではまるのはほんの一部の人間に限られるがな。殆どの人間ははまる前に距離を置くようになる」
「そりゃそうだろうな。殆どの人間には参加資格すら得られないんだからはまりようがない」
周囲からの見る目が変わると言っても、それはあくまでも結果を出した場合の話だ。その成功体験が無ければ、のめり込むなんて事にはならないだろう。
「その通りだな。まずこの大会に出る資格を得るだけでも狭き門……今のこの競技に出られるだけでもエリート中のエリート。どこでのめり込むかはわからないが、その数は限られるだろうな」
「現時点で世界人口の中の五百人だけだからな。そりゃあ数も少ないか」
そんな事を話していると、フィールド上に設置してあるスピーカーから放送が流れた。
「中間報告、中間報告。ただ今を持ちまして、Bブロックの選手数が半分になった事をお知られします。繰り返します……」
放送の内容は、五つある内の一つのブロック内での参加選手が半分にまで減った事を告げる放送だった。
「もう、半分にまで減ったところがあるのか……!?」
この放送に、流石のオリヴィエも驚きを隠せないでいた。それもそうだろう。何せ俺達はまだ競技が開始されてからいまだに戦闘そのものを行っていないのだから。
「俺達が潜んでいる間に、やってるところはやってるらしいな」
「Bブロックと言うと確か……」
オリヴィエはおもむろに書類を確認する。
「誰か有名人でもいるのか?」
「ああ。優勝候補のド本命がいるブロックだ。恐らく競技開始直後にあった遠距離魔法の連発も、彼が一瞬で場を制圧したのだろう。さらに言うと、Bブロックには部長も参加している」
そう言いながらオリヴィエは書類を俺に見せて来る。記載されている名前を確認するとなるほど、確かにクラウディア先輩の名前が記載されていた。
「あの人に限って負けるって事は無いとは思いたいが……この競技となると懸念材料は幾つかあるな」
「ああ。まず回避しようにも決められた範囲から脱してしまえば場外で負けになってしまうからな。その上さらに障壁発生装置が破壊されたら強制的に敗退だからな。これは部長にとって不利に働くだろう」
どんなに回避に専念しようとしても、ルール上強制的な敗北があり得る以上、クラウディア先輩にとっては不利なルールだろう。しかし、現時点ですでに半数まで減ってるとなると、競技終了時点ではもっと人数は減っている事が予想される。そうなれば、生き残っているだけでも得点はかなりのものになるだろう。




