確保と流出
「この大会で優秀な成績を収めると税金が安くなるのか? 一度でも結果を出せばずっとか?」
「さあな。詳しい事は私も知らん。外国の税金の……しかも特例中の特例だからな。だが、税制の面で様々な優遇措置を受けている魔術師は少なからずいて、そういった人物が一度だけでなく何度も火霊祭に参加しているところから考えて、一度だけの査定と言う事はないんじゃないか?」
複数回出場するメリットがあるって事か。まあ、国としては何度も出て欲しいところだから何らかのメリットは提示して来るか。
「具体的な基準はわからんが、何度も結果を出す事で色々と恩恵がもらえるのだろうな」
「何度も出場してより上の順位を……いや、それだと一度でも出れば良いと考える者もいるか」
「しかし、そうなると今回の大会にもそういう選手は少なからずいるって事になるな」
「いるだろうな。そもそもこの大会で結果を出した選手に大なり小なり優遇するのはどこの国でもやってる事だからな」
「なに? そうなのか?」
オリヴィエの言葉に一瞬驚いたが、程度の差はあるにしてもそういった事はありそうだな。まあ、それが税制のレベルで優遇されるというのは中々無い優遇措置だとは思うが。
「どこの国だって優秀な魔術師は確保しておきたいし、流出させたくないからな。そして国内でさえもどこの領主や貴族が抱きかかえるかで争ったりしたりするわけだ」
「国同士で人材の奪い合いをするだけならともかく、国内でも争うとは末期としか言いようが無いな。その争いを間近で見せられる魔術師が嫌気を差したらどうするつもりなんだ? 下手したらそれが流出の原因になるんじゃないか?」
そいつ本人からしてみたらどの組織、勢力に所属するかって話だからな。単純に条件だけじゃなく、雰囲気とかも決め手になりかねないぞ。
「権力者同士の醜い争いを見せられて流出か。ありえそうだな。まあ、そこは自分の魅力を見せられなかった領主の落ち度という事になるのだろうな」
まあ、そういう面を見せられて世捨て人になるような精神性の持ち主なら、そもそも領主達の同類を相手になびく事も無いって事になるから別に出て行かれても領主目線では損は無いのか? そこのところをどう考えるかは……その人次第ってところか。




