魔法が優れているだけでは話にならない
「空間魔法で空間魔法を認識する事は出来るが、他の系統の魔法は認識出来ないわけか……しかし、より高度な魔法なら他の魔法であっても認識出来るわけだな?」
「ああ。当然そういった魔法も存在する。魔力を感知したり、物体の形状を認識したりな」
「まあ、そういったものがわからないと向かって来る攻撃を対処出来ないからな。他にはどういうものがあるんだ? 物の材質や気温とかもわかるのか?」
「レベルにもよるが、理論上は可能だな。もっとも、貴様は知らないと思うがそのレベルはかなりのものだぞ? 普通は視覚で得られる以上の情報を取得する事は出来ん……と言うより必要無いからな」
なるほど確かに物体の材質や気温は見た目じゃわからないな。
「まあ、普通は気温なんてわざわざ魔法で測ったりはしないか」
「空間魔法で認識すると言っても、どの要素をどういったレベルで認識するかは術者次第なところはあるな。一般的には視覚情報のように認識する事が最も容易だとされている。これは目で見れば差異が一目瞭然だからな」
「……ん? 魔法での認識と現実には差異があるって事か?」
俺の質問に対し、オリヴィエは口元を手で隠しながら少し黙り、何かを思案するそぶりを見せる。
「……少し誤解を招く言い方だったな。例えばそうだな……工業製品の図面だけをいきなり見せられてもそれが何なのか理解出来んだろう? だが、その図面には正確な情報が記載されているのだ」
「……正確な情報は来るがそれを本人が理解出来ないって事か?」
「ああ。図面のルールさえ理解していればわかるが、理解していなければそもそも何が書かれているのかさえわからんだろう。ましてやそれが部品ならばなおさらだ」
確かに……もし素材が化学式で記載されていたら普通の人間からしたらわけのわからない記号とアルファベットの組み合わせにしか見えないだろう。しかし、わかる者からしてみたらこれ以上明確に理解出来る記載方法も無いわけだ。
「鉄か銅かもわからんだろうな。銅だとしても合金かどうかでもさらにわからなくなる」
「まさにそれだ。同じ素材の、異なる比率の合金を何種類も並べられてそれらを識別するなどそれこそ専門知識が必要になるだろう。例えその検査記録が目の前に置かれていたとしてもだ」
……無理だろうな。言ってみれば天気予報に必要な情報だけを渡されて明日の天気を教えた事にされているようなものだ。……単に魔法が優れてるってだけじゃ話にならないらしいな。空間魔法と言うのは。