わざわざ近寄る意味が無い
「確かに長距離攻撃出来る奴がわざわざ俺達に近寄る意味は無いな」
「ああ。だからこそ、ここへ襲撃を仕掛けるとしたらその攻撃方法は私と同じものになるだろうと予測出来る」
「お前と同じって……攻撃そのものを転送魔法で飛ばすって事か」
例えばこの洞窟の中に爆弾でも飛ばすってわけか。
「その通りだ。だが、その攻撃法は私も出来る。故にその対策も打てる……と、言うより今まさに打っている最中なのだが……中々仕掛けて来ないわけだ。対策されているとわかっているからかもしれないがな」
「対策……? そんな方法があるのか?」
「ああ。空間魔法同士の戦いは基本的に陣取り合戦だ。より広い範囲に干渉出来る者が優位に立つ。極論、私の空間魔法よりも大きい体積を持つ空間魔法が使えれば勝てるわけだ。要は魔法の範囲をすべて塗りつぶしてしまえば良いのだからな」
空間魔法を空間魔法で塗りつぶして無力化するって事か。
「ペンキの上に別の色のペンキを塗るようなものか? ……で、より多くのインクを持ってる方が勝てるってわけだ」
「まあ、そういうイメージで構わない。ただ一つ、ペンキとは異なる点がある。ペンキは塗った後に時間が経てば固まってその場に残るが、空間魔法は時間が経つとすぐに消滅するという点だ。塗った後すぐに透明になる絵の具のようなものだな」
「それじゃあ、せっかく塗りつぶしても意味無いんじゃないか?」
「魔法が解除されている瞬間ならそうだな。そのため空間魔法は定期的にかけ直す必要がある。まあ、一般的には発動し続けていると表現した方が良いのかもしれないがな。……で、ここからが本題なのだが、空間魔法は塗りつぶしだから最後に塗りつぶした方が魔法として成立するという性質がある。つまり、防御に関しては範囲が狭くても魔力の量や発動速度で無力化する事が出来るわけだな」
魔法陣を描かれる前に自分のインクで塗り潰せば無力化出来るって事か。そして魔力の量と発動速度の高いオリヴィエなら相手の空間魔法を完全にシャットアウトする事も狙えるってわけか。