空間魔法の射程距離
「なるほどな……確かに距離の概念が無いはずの空間魔法で射程距離なんてものが存在するのは矛盾するな」
「距離を無視出来るのは空間に干渉する現象そのものだけだからな。その現象をどこで発生させるかというのは全く異なる概念になるわけだ」
火属性魔法で例えるなら、発火するという魔法を発動しているのではなく、燃料と火花を魔法で用意して、その後発火するという現象を起こしているようなものか。
「召喚にせよ何にせよ、空間魔法の発動には魔法陣の展開が必要になるからな……その魔法陣の展開に時間がかかるし、認識する事も出来るわけか」
予め魔法陣が刻まれたアイテムがあるのであれば、即座に転送する事も可能なのだろうが、そうでなければまずは魔法陣を展開するところから行う必要がある。確かにそれなら空間魔法を使えなくても認識する事は可能だな。
「ああ。たとえ空間魔法を使えなくとも、魔法陣の展開を視認出来れば対応出来るし、魔力の感知能力が高ければ同じように認識出来る。長距離の移動ほど様々な要因が重なってバレやすくなるわけだ」
「まあ、そこは一長一短という奴だな。……いや、短所はあって無いに等しいものだな。いくら認識出来ても術者が途方もない程遠くにいられたらどうする事も出来ない」
それこそ、射程距離が50メートルだとしても壁の向こう側から空間魔法を仕掛けられたら、取れる対策はかなり限定される事になる。反撃を行う場合、まず最低でも壁をどうにかする手段が必要になるわけだ。同じように壁を通り抜ける攻撃を仕掛けるか、もしくは壁をぶち抜いて攻撃するかだ。
「魔術師にとって射程距離はかなり重要だからな。得意な距離を作るのも大切だが、その距離を保つための距離の詰め方や取り方を身に着けるのも重要になって来る。そういう意味でも、転送魔法で本人が直接乗り込んで来るという事はまずありえないと断言しても良いのかもしれないな」
なるほどな。長距離での攻撃手段があるのにわざわざ俺達の目の前に現れなきゃいけない理屈は無いな。そんな事をしたらかえって俺達との戦いに負ける危険性が出てきてしまう。




