開始直後
「始まるな……とは言っても、選手の位置を特定しない事にはこちらも動きが取れないのだが……」
「参加者の人数的に考えても状況的に考えても開始直後が最も浮足立つ選手が多くなるハズだ。そういった選手をどれだけ倒せるかだな」
確かに……緊張している選手が最も多くいるのは他ならぬこのタイミングだろう。
「開始直後の、右も左もわからないような状況の選手を積極的に倒していくわけか」
「それが一番効率が良いからな。それに、本当に強い選手ならこの手の競技は危うげなく突破して来る。私達が狙っても無駄だろう」
倒せるかどうかもわからない選手よりも、確実に倒せるであろう相手を優先して倒していくわけか。
「まあ、格上が相手じゃ積極的に攻め込んでくるか、もしくは徹底的に逃げ続けるかどうかの二択になるだろうな」
「格上が相手では逃げたくても逃げられない事も良くある事だろう」
俺は会話を切り上げると、目の前の競技に集中し始めていた。しかし、結果から言えば、俺達は目の前の事に集中していられなかった。それほどまでに大きな衝撃と騒音が競技開始から数秒も経たないうちに鳴り響いたのだ。
「……何の音だ?」
「わからん。恐らく高名な魔術師同士がぶつかり、互いに出し惜しみ無しで戦っているのか、それともあるいは、雑魚を蹴散らしているのかは知らないが、少なくとも一人の魔術師が暴れている事になるな」
「それにしては早過ぎやしないか? いくら何でも他の参加者との戦いが早すぎる。これじゃあ競技開始の前に他の選手がどこに隠れているのか理解している事になるぞ」
無くは無い話ではあるが……いったいどれだけ広範囲を魔法で攻撃しているんだ?




