あと数分
「まあ、そういうわけだ。それより、あともう少しで競技が始まるぞ」
そう言いながらオリヴィエは時計を俺達に見せる。
「数分ってところか。幸い、近くには選手はいない。地形的有利を狙って山を登って来た選手を素早く見つけ出せれば有利に先制攻撃が仕掛けられるな」
係員は俺達審査官がどこで待機しているのか把握しているからな。わざわざすぐ近くに転送するような事はしないか。
「高低差がある上にこちらは待ち伏せする側だからな。序盤でどれだけ人数を減らせるかが勝負だ」
確かに序盤を過ぎれば選手達が山を登るという選択肢を取る可能性は下がってくるだろう。時間がたてばたつほど誰かが待ち伏せしている可能性が上がると判断されるからだ。
「終盤になれば、山に登ろうと考える選手は一気に減るだろうな。明らかにリスクが高い」
「終盤になれば、戦況は完全な膠着状態に陥る事が予想出来る。敗退濃厚な選手が一か八かで動く可能性もあるが……それを私達が狩れるかどうかだな」
狩ろうとしているのは俺達だけじゃない。他の審査官だって同じことを考えているだろうし、他の選手はもっとその傾向が出るだろう。
「例え他の奴に横取りされたとしても、その横取りした選手の位置さえ特定出来てしまえば悪い展開でもないだろう」
「いかに上手く潜伏しながら敵を補足出来るか……これが重要になってくるな。そして逆に最も避けねばならない状況は……こちらが何も把握出来ていない状況で選手にこちらの位置を完全に把握されているという状況だな」
完全に成す術が無いという状況だな。その場合の打開策は手当たり次第に周囲を捜索して偶然発見するしかない。それに対して相手は俺達を避けるように動けば良い事になるから実力が足りていなければ、それこそ偶然で最適な行動を取り続ける必要があるわけだ。




