一蓮托生
「まあ、運営も色々と対策しようとはしていたようだが……火霊祭が興行的な側面を強めていけばいくほどマフィアの撲滅は難しくなっていったわけだ」
「当然の傾向だな。何と言っても役所じゃ手続きだの何だので手間がかかるような工程でも、マフィア相手ならトップからの合意があればすぐに実行出来るからな。売り上げを追求するならむしろ運営の方から積極的に利用しようとしてきてもおかしくない」
いわゆる元締めという奴だからな。その手の事を公的な機関がやってくれるかと言うと、やってくれないだろうな。少なくとも、売り上げ追求のために法的にギリギリの事に手を貸してくれるかと言ったらそんな事はないだろう。
「まあ、運営とその手の連中との関係がどういうものだったかは知らんが、当時は交通網の脆弱さから狭い範囲での縄張りしか持てなかったから棲み分けが出来ていたのだが……より安全で早い移動が可能になった辺りから一気にマフィア同士の抗争が激化した時代が到来する」
「組織としては巨大な方が利益は大きいからな。勢力を拡大するために抗争が発生するのは頷ける」
「抗争が激化するにつれて国も対策に乗り出そうとしたのだが……その時にはすでに色々と手遅れでな。領主は勿論のこと、国の中枢にも町や村の有力者とも強い繋がりを持って勢力争いをするものまで現れ始めた」
まあ、社会的地位のある人間同士が自分自身の利益を追求するために勢力を拡大しようとしたら同レベルの連中と争いになるのは目に見えているからな。そういったライバルに勝とうとすれば……自ずとマフィア連中と協力する事もあるか。
「新しい交易ルートを開拓するにしても、どの村や町にルートを繋いでいくかで揉めるのは目に見えているからな。自分達のところに経済的な恩恵があるか無いかがかかってるという意味では……妙な話だが領主もマフィアも一蓮托生というわけだな」
入って来る金の量も行き来する物資も人間も文字通り桁違いの数になるからな。国の方針がどこでも良いからとにかく交易ルートを構築したいというものなのであれば、勢力拡大を目論んでいる連中からすれば必ず自分のところにルートを引いてもらいたいと考えるのが自然だろう。




