管理するまでの経緯
「……まあ、会場で選手や観客に弁当を売るなんて可愛いものだろ。むしろ規制のしようがない」
「ああ。客の方だって規制されるのは望んではいない。そこで大会の運営の責任で管理する事になったわけだ」
確かにそこら辺のサービスは充実して欲しいと考えるのが自然だろうな。
「むしろ最初は運営の方で弁当を出したりはしてなかったのか?」
「やってたとは思うが、黎明期の話だからな……見通しが甘かったとしてもおかしくはないだろう」
「それで、実際にやってみたら色々と問題が起きて、その対策をしていって形になっていったという事か」
「そこまでかしこまった話というわけでもあるまい。最初はそもそも大会として開いていたわけでもなく、自然と人が集まっていただけのハズだ。そこで野次馬相手に弁当を売り始めたとしても、当人達からしてみればあずかり知らぬ話だ。その当人にまで弁当を売り始めたら一線超えたようにも思えるがな」
まあ、会場で観客が何を食べてるかなんて事を選手が気にするか? って話だしな……気にも留めないだろう。
「そのレベルなら好きにやらせとけば良いと思うがな」
「そのレベルで済めばな。だが、実際にはそのレベルでは済まなかった。……いや、正確には済まなくなるレベルまで上がってしまったと言った方が正しいか」
「……まあ、ルールが無いからって好き勝手やらかした結果、ルールが出来上がるってのは良くある話だな……」
これは時間の問題でそうなるものだ。
「問題はそのルールが作られるにあたっての経緯だ。特にルールが無い事を良い事にならず者集団がその商売を独占しようとした事がある」
「……ならず者が弁当を作って売り歩いたのか?」
「まさか。そんな真っ当な真似はしない。と言うよりそんな方法を選ぶならそれは商売人であってならず者とは呼ばん」
「まあ、それはそうか」
「要は勝手に管理者を名乗り始めたわけだ。自分達の許可なく勝手に商売をするなとな」
勝手に管理者を……? なるほど。マフィアが介入して来たというわけか。当時からそういう名前で呼ばれてたかは知らないが、とにかくそういう類の輩が出て来たわけだ。まあ、人と金が集まってくれば必然的にそういうのも出て来るだろうな。




