大会史上最大の事故について
「ああ。火霊祭の歴史は長いからな。流通が発展する前から行われていたし、むしろ流通の発展に伴って大会の規模も大きくなってった」
「まあ、流通が発展すればそれだけ観光客も多くなるし、そもそもの人口だって多くなるだろうからな」
イベントを開く際に、その開催地の人口の多さやアクセスの良さはそのイベントの盛り上がりに直結するからな。
「ああ。火霊祭だって最初から世界的な大会だったというわけではない。と言うよりそもそも当初は大会ですらなく、賢者様の後継者探しのための試験だからな。もっと言えば、弟子入り志願者を追い返すために無理難題を吹っかけていたという説さえある」
「その無理難題を吹っかけるのがイベントになったって事か?」
「正確には大会として開かれたのは賢者様の死後だ。当たり前の話だが、毎年弟子を取るなんて事になるわけがないからな。賢者様の弟子の一人が大会を開いて、その時の優勝者を弟子にしたから賢者様の後継者を決める大会と呼ばれるようになった。実際、弟子の弟子やら自称弟子等を含めればかなりの数がその大会に出場したし、優勝した者が名実ともに賢者様の正統後継者として認識される事もあったから嘘でも無いがな」
一応地続きにはなっているが、賢者様の後継者探しと明確に同じものというわけではないわけか。
「確かに後継者を毎年定期的に探すなんて普通に考えたらあり得ない話だな。定期的に弟子がいなくなっている事になる」
「そのため弟子を取るためではなく、むしろ弟子入り志願者を門前払いにするためにやっていたと考えるのが通説となっている。実際に賢者様の弟子はそれなりの数がいたとされているしな」
……まあ、弟子入りを志願してくる者は後を絶たないだろうな。
「自分から探すまでも無く、向こうの方から弟子入りしにやって来るって状態だったわけか。まあ、普通はそうなるだろうな」
「……で、さっき話に出た過去最大の未曽有の大災害についてだが、これが賢者様から独り立ちした弟子同士の派閥争いによるものだとされている。何せバックボーンが一般の参加者とは根本からして違うからな。熱の入り方も違ったのだろう」
それでトップクラスの魔術師同士が全力でぶつかり合ってしまったというわけか。




