運営の対策
「……人数が少なくなってくると反則への対応をしなくなるのか……?」
「対応をしなくなるというよりは、対策が出来なくなってくると言った方が正しいな。何せ係員が束になっても勝てないようなレベルの魔術師同士が全力で戦うわけだからな。反則なんてされてもわからないし、わかったとしても止めようが無い……という状況に陥る可能性もある」
まあ、確かにその時点では発覚しない反則というものはあるだろうな。
「わかったとしても止められないというのは……大会運営としてどうなんだ? 好き勝手暴れ回られてもどうする事も出来ないんじゃ収拾がつかないだろう」
「勿論、最大限度の対策はしている。極力観客や民間人に被害が出ないように周囲に人がいない環境で戦わせるとか、戦わせる場所を市や国の権限で危険区域に認定してその場に残るのを自己責任にするとかな」
「前者はともかく後者は工夫って言わねえだろそれ」
と言うか、周囲に大規模な被害が発生するのは前提なわけなんだな。
「だが、どちらも実際に行われたものだぞ?」
「……危険地帯に認定されたのか?」
「ああ。最初は本当に偶然……と言うよりは最高位の魔術師同士の戦いを甘く見ていたと言った方が正しいのだろうな。まさか高名な魔術師達が民間人のいる場所でそんな危険性の高い魔法を使うとは誰も思わなかったわけだ」
世界中から注目を集めている中でそんな放送事故レベルの真似はしないと思っていたわけか。
「周囲への被害を完全に無視した魔法を撃ったのか」
「それも一発や二発ではなくお互いに何度も連発したようだ。当時の事は記録や文献等で調べる事も出来るが……酷いありさまだったようだな。都市機能が完全にマヒし、……死傷者も数え切れない程出したと言われている。文句なしに火霊祭史上最大規模の大事件だ」
そりゃあ危険地帯にも認定されるわな。都市の中央で突如天災レベルの魔法が何度も放たれたとなったら、都市機能のマヒどころかそのまま崩壊まで行ってもおかしくない。そんな大事件を巻き起こしておいてよく今も存続する事が出来たな。




