現場では確認のしようが無い
「ルールを調べる限り、装置そのものが無事ならば私達審査官や選手達は脱落と言う扱いにはならないようだな」
「だから装置だけ隠して自分は好き勝手戦うという作戦も理論上可能という話になるわけだが……放置している間に破壊されたらその時点で脱落扱いになるわけだ。そして問題なのは、脱落した後でも戦闘を続行してしまった場合、そいつは反則行為を働いた事になるわけだな」
この作戦の一番の問題点がまさにそこだ。装置が破壊された事を本人がリアルタイムで認識出来ないと、反則行為によって強制退場させられる危険性があるわけだ。そしてその反則行為にはほぼ確実にそれによって迷惑をこうむる選手がいる事になるわけだから、単純に自分が退場になればそれで終わりという話では済まなくなってしまう可能性も普通にありえるわけだ。……とてもじゃないが、俺達審査官が選べる選択肢では無いな。
「ああ。かなりリスクの高い行動だな。もしも本当にそんな反則が行われてしまったとしたら……それは間違いなく事件だな。それも今後の大会運営において対策書が必要になるレベルの大事件だ」
まあ、発生した事件の影響は計り知れない程大きいものになるだろうからな。
「大事件の犯人にはとてもじゃないがなりたくはないな。審査官はそんな無茶な真似はしないだろうが……選手の方はどうだろうな? もしかしたら実行に移す奴がいるかもしれんぞ」
「そうなると問題は、どの装置が誰の物なのか私達の視点では確認のしようがないという点だな。放置してある装置が実は他の審査官のものだったとしても、大問題に発展しかねないというのに、それがもしも他の選手のものだったとしたら、運営からの報告が無いと誰が反則行為を働いているのかわからない状態で競技を続けてしまう事になってしまうな」
確かにこれは問題だな。一応、その選手は障壁発生装置を持っていな事になるが、他の選手も同様に持っていない可能性もあるからな。もっと言えば、放置してある装置を破壊した人間にしか反則をしている者がいる事を知りようが無いという点だ。それこそ虚言でも隠してあった装置を破壊したと言われたら反則を恐れて戦闘を躊躇う者が出て来てもおかしくは無い。……まあ、その点に関してはもはや騙される方が悪いと正直思うが。




