これ以上は現れない。
「五百人同時の転送か……確かに想像もつかんな」
「厳密には五百人を転送させる事そのものはありえないというレベルでは無いが、五百人全員をそれぞれバラバラというのが問題だ。転送魔法と言うのは基本的に出入り口が決まっているからな」
「つまり……五百個の出入り口が必要になるって事か?」
「ああ。それぞれに対応した入り口と出口を用意する必要がある」
単純に入り口と出口を用意するってだけでも苦労しそうなものなのに、その上さらに組み合わせでリンクさせる必要があるとなると、もはや管理する事も出来無さそうだな。
「仮に同時でなかったとしても、五百人を一人一人転送させるというのは凄い話だな?」
「凄い……と、言うより、意味が分からんな。転送魔法を惜しげも無く使用するなんて魔力の無駄遣いにも程がある。特定の何か所かにまとめて転送させて、その後徒歩で移動させた方がはるかに効率的なハズだ」
確かにオリヴィエの言う通りだ。一人一人に対してそれぞれ座標を決定して転送するよりも、何人かをまとめて転送してその後は各自自由に移動させた方が楽なハズだからな。
「その方法では他の選手の歩く方角やスピードからある程度の位置を特定出来そうではあるからな……それを嫌ったのかもしれないな」
「だとしても、限度と言うものを超えていると思うがな。……それより、もうじき競技が始まるぞ。これ以上ここにいても新しい情報は得られまい。一度テントに戻るぞ」
転送で選手が配置される以上、この時点で人がいないならもう新しく誰かが現れる事も無いだろう。俺達はオリヴィエの言う通りテントに戻った。




