ランダムには決められない
「まずいな。てっきり徒歩で移動してくるとばかり思っていたが……」
万に一つ、こちらの位置が相手にバレた時を考えて拠点から少し離れた場所で周囲を見渡していたが、そんな中で最初に言葉を漏らしたのはオリヴィエだった。
「何の前触れも無く選手が突然現れたな。転送魔法で直接送られてきたというわけか。俺達のように」
「この位置からならかなりの人数の選手のおおよその位置を予想出来ると踏んでいたが……こうなってくるとまるであてにならんな」
「一応確認するが、あの選手は有名な人物なのか?」
「いや、特に見た事のある顔では無いな」
双眼鏡で選手の顔を確認するが、特に優勝候補というわけでもないらしい。
「それと、さらについでなんだが、選手の転送は完全にランダムだと思うか? と、言うか、ランダムに転送って技術的に可能なのか?」
「どういう事だ?」
「つまり、偶然あの選手の近くに他の選手が転送されたりする事はありえると思うか? 或いは俺達のすぐ近くとかにだ」
「それはありえんな。運営は私達の位置を把握しているし、当然、選手を転送する位置も把握している。わざわざすぐ近くに転送するという事は無いだろう。そして、ランダムに転送する事に関してだが、それは不可能だ。転送先には必ず座標が必要になるからな」
座標か。だとすると俺達審査官の転送先も選手達の転送先もデータが残っている可能性があるな。
「座標が必要って話だが、その座標をランダムで決める事は出来ないのか? 例えばサイコロとかで」
「そのサイコロで地中20メートルと出たらどうするつもりだ? 上空でも同じことだ。この辺りの地形は高低差があるからランダムには決められんぞ」




