選手の探し方
「おい、そろそろ選手が入場する頃だぞ」
オリヴィエが俺達に時計を見せながら告げる。
「そろそろか。それなら俺達も本格的に身を隠した方が良さそうだな」
偶然だろうが何だろうが、最初に敵を発見した方が圧倒的に有利になる。身を隠す事に関しては慎重にならないとな。
「いや、身を隠すよりも近くにいる選手を確認した方が良いだろう」
「競技を開始する前に敵の位置を確認するのか? あまり褒められた事じゃないな」
「競技が始まってからでは手遅れな場合だってあるだろう。それに選手の方だって同じだ。調べられるなら調べるに決まっている」
確かに選手の中には俺達審査官の位置を今のうちに調べている可能性もあるな。それにライバルになるであろう他の選手の位置も可能な限り覚えているだろう。
「まあ、調べるだろうし、調べなくても近くにいる連中に対しては自然と目で追いかけるだろうな」
「ああ。特定の位置まで係員から目隠しをしながら誘導でもされない限りは周囲から確実に情報をかき集めるだろうな」
目隠しをしながらの移動か。まあ、あり得ない話じゃないな。……が、この競技を行う人数から考えればとてもじゃないが係員の人数が足りなくなる。係員からの案内は無いと考えるのが妥当だな。
「複数人のグループなら成り立つとしても、個人競技でその配置方法は無理があるな。それだけで五百人の係員が必要になってまう」
「ルールを説明している会場から直接ここへ移動するとなれば、選手達の移動ルートもおのずと特定出来る。この位置からなら相手にバレずに見れるハズだ」
そう言いながらオリヴィエは俺とミーシャに双眼鏡を渡す。
「これで歩いている選手を見つけるわけか」
トップ層はともかく、普通の選手が相手なら悟られる事なく位置を特定した上で作戦を立てられるだろうな。




