構造的欠陥
「これで一気に上空まで飛び上がって、その後はそのまま落ちるわけか」
「ああ。そうやって敵を真上から襲撃する」
「打ち上げるのは良いが……これ、ちゃんと垂直に立ってるんだろうな? 少しでも角度が傾いているととんでもない方向に飛んで行くぞ?」
俺はそびえたつカタパルトを眺めながらオリヴィエに尋ねる。飛び上がる距離次第では敵を狙える範囲が著しく狭まる可能性があるわけだが……オリヴィエはこのカタパルトを無造作に置いたようにしか見えなかった。
「それは私もわかっている。……が、こればかりは私でもどうする事も出来ん」
「どうすることもできないって……水平器を使えば良いだろう?」
「いや、水平器だけではどうする事も出来ん。仮にこのカタパルトを完全に真上を向けさせる事が出来たとしても、私を真上に射出する事はかなり難しいものになる」
仮に真上を向いてもオリヴィエを真上に飛ばせない可能性があるだと? どういう事だ?
「それ……どうやってもお前を真上に飛ばす方法が無いって事にならないか?」
「仕方あるまい。大砲の弾のように飛ばすと言っても、まさかライフリング加工するわけにもいかんからな。どうしたって軌道がブレる事になる」
「ライフリングは……無理だな。流石に回転しながら発射なんて事をされたらまっすぐ飛んでも方向感覚が完全にマヒするだろうな」
麻痺するって言うか、一発で目が回って墜落するだろうな。
「そのせいで一定以上の距離まで飛び上がろうとすると一気に精度を落とす欠陥品となっている。丘の上に設置する必要があったのはこの射程距離を抑えつつ高い高度を稼ぐためだ」
要するに高く飛ばし過ぎるとどこへ飛んでいくかわからないから、土台の方を持ち上げて飛距離を伸ばそうってわけか。それでも相当なブレが発生しそうな口ぶりだな。




