画期的な装置
「ほとんど何でもありのルールか……私達からしてみたらむしろわかりやすくてありがたいかもしれないな」
「確かにルールを確認しながら戦うというのは骨が折れるな」
「そうなると、選手達も何でもありで動いてくるわけだ」
「まあ、こっちも何でもありで戦うんだからある意味フェアではあるのかもな」
思ったよりも滅茶苦茶な事になりそうな競技だな……相当な数のけが人が出るんじゃないのか?
「……さて、競技が始まるまで少し時間も空いているが、それまでどうする? 紅茶でも淹れるか? コーヒーもあるが……」
「これから戦うってのに優雅なものだな。それよりお前、敵を発見したら空へ飛んで奇襲を仕掛けるって話だったが、木の上で紅茶でも飲むのか?」
俺はずっと前から思っていた事を聞いてみた。贅沢品を用意しているのは良いが、上空へ飛んで攻撃を仕掛ける以上、オリヴィエは基本的に木の上で待機している事になるハズだ。そんなところで紅茶を飲むのは無理があると思うが。
「木の上で? そんな事するわけないだろう。それに、そんな場所にいたら敵に発見される可能性が高い」
「じゃあ、敵を見つけてから木に登って出撃するのか? 高い木が必要なんだよな?」
「いや、高い木が必要だったのは私が上るためじゃない。この装置を隠したかっただけだ」
そう言いながらオリヴィエは巨大な長い筒……煙突だろうか……? そのような形状の建物を取り出す。
「……煙突か?」
「カタパルトだ」
「カ、カタパルト……? まさか、これからお前が撃ち出されるのか?」
「そのまさかだ。これで私を大砲の弾のように撃ち出して上空まで一気に飛び上がる。その後は敵に向かって落下と滑空を繰り返して魔力を攻撃に集中させつつもスピードを上げていくわけだ」
人間を発射する大砲かよ……とんでもない兵器を作るもんだな。
「これを作った奴は頭大丈夫か?」
「大丈夫では無いだろうな。とても実用的とは言えない代物だ。だが、上手く使えば上空へ飛ぶまでのエネルギーを外付けのパーツで賄う事が出来る。上空へ飛び上がる事で多大な恩恵を得られる魔術師であれば、利用する価値はある」
まあ、速さを維持するのと加速させるのでは必要とされるエネルギー量に雲泥の差があるからな。実際に車も停止の状態から発進してトップスピードに到達するまでに何度もギアを段階的に上げていく必要がある事を考えると、いきなりトップスピードで発進出来るカタパルトはかなり画期的な装置ではあるだろうな。




