ルールに適した武器
「無論、武器も大きければ良いと言うものでもない。ここまで持って帰るのにも手間がかかるからな。かと言って、突撃の度に武器を捨てて戻ってたらこちらの間合いを教えているようなものだ」
確かに、武器が投げ捨てられている範囲は危ないと思われる可能性は高いな。
「ここを出発してから再びここに戻って来るのに適した武器があるって事か」
「その通りだ。これを使う」
そう言いながらオリヴィエは二本の巨大なランスを転送魔法で取り出す。
「それは確か……」
「ああ。魔力を吸収しやすい金属で作られていてな。端的に言うと槍の穂先と石突から魔法を放出出来る武器だ」
つまり、槍の両方の先端から魔法を発射出来るというわけだ。
「石突……つまり、槍の後ろの先端からも魔法が打てるわけだ。背後の敵にも攻撃出来るって理屈のわけだが……お前の場合、その性質はあまり意味が無いな」
オリヴィエは転送魔法で爆発を背後にも炸裂させる事が出来るから、背後への攻撃が可能になるといううたい文句は意味が薄い。しかし、背後へ向けて魔法を打てるという点は他にメリットがある。
「ああ。攻撃としてではなく、推進力として放出する。これで帰りも飛んで行くわけだ」
「確か小回りが利かないのが難点だと言っていたが……拠点に戻る分には問題にはならないだろうな」
取り回しの問題で狭い空間では使えない武器だったが、離れた場所から十分な加速を乗せた上で突撃出来るならデメリットはかなり改善される事になるな。
「それだけではないぞ。このランスは形状と大きさから穂先を相手に向けているのであれば攻撃を受け流しやすい形状をしている。これは突撃を行う際に軌道を逸らされたり相殺されたりしないための設計なのだが……このランスのリーチは障壁が展開される範囲よりも長い。つまり、障壁に攻撃がぶつかる前にランスである程度弾けるわけだ」
障壁が破壊されたらその時点で敗退となるのがこの競技のルールだ。そのため、いかにして障壁が破壊されないように立ち回るかがこの競技を制するカギになるわけだが……本来自分の身を守るための障壁のハズなのを、その障壁が破壊されないように武器で守るというのは何とも妙な話だな。




