帰って来る分のエネルギー
「……つまり、当初の目的通りに奇襲攻撃に成功したとしても、その後で他の選手から集中砲火を浴びる事は避けられないって事か。行って帰って来るまでの往復の時間を考えたら、お前の攻撃範囲ってのはそこまで広くならないんじゃないか?」
攻撃を仕掛けるのは問題無いにしても、厄介なのはその後でここまで戻って来る事だ。ここが丘の上の方の位置にあるというのが特にキツイだろう。勾配のある坂道を上るのは平原を移動するのとはわけが違うからな。
「周囲にいる敵の位置を完全に把握している事を前提にして言うが、近くに他の敵がいなければ距離は伸ばせる事になるな」
「まあ、帰りに敵から襲われる心配が少なくなるからな。……そう言えば思ったんだが、空を飛んで奇襲攻撃を仕掛けるんだよな? 帰りも飛んで戻って来るのか? 歩くのと飛ぶのどっちが楽かは知らんが……」
空からの奇襲攻撃を仕掛けるとしても、攻撃の際に必ずしも着地しなければならないってわけではないハズだしな。そのまま飛んだ状態で戻って来れる可能性だってあるわけだ。もっとも、攻撃を仕掛ける際は丘の上からの出発になるから上から下へ向かって飛べば良いのに対し、帰りは丘の上へ向かう事になるから下から上へ飛ぶ必要がある。つまりは重力に従って飛ぶか重力に逆らって飛ぶかの違いがある。この違いは魔力の消費にかなりの影響を出しそうなものだ。
「歩きと飛行か。一概にどちらが楽と言う答えは出せんな。と言うのも、歩きの場合消費するのは体力だが、飛行の場合消費するのは魔力だからな」
「ケースバイケースって事か」
「さらに言うと、飛んで帰って来るというのにも問題がある。帰還する際に飛行しているか、それとも地上に立っているかによっても魔力の消費は大きく変わるからな」
……なるほど? そもそも空を飛ぶための加速に文字通り爆発的なエネルギーが必要になるから、その分をねん出するのに魔力の消費が激しくなるのか。




