虚偽説明の可能性
「もしかしたらより高得点を取った選手には何らかの優遇があるのかもしれないわけだ。仮に無かったとしても……選手が何かあるかもと思えば必要以上に得点を取りに来る選手もいるかもしれないな」
そうなってくると、運営が途中経過を放送で知らせて来るのは色々と波乱を呼びそうだな。
「出来るかどうかはともかくとして……得点の独占は戦略としてアリかもしれんな。自分がより多くの得点を取ってしまえば、他の選手はそれだけ得点を得られない状況が生まれてくるわけだからな。極端な事を言えば、格下を軒並み倒し切ってしまえば、残された選手は格上との戦いを強要されてしまうわけだ」
確かに誰も倒せないまま競技終了まで生き残れたとしても、そうなった場合、撃破数によって順位の差が如実に表れてしまう。つまり一点差で順位が大きく狂ってしまうわけだ。
「この競技は得点の奪い合いでは無いからな……独占されたら上位入りはまず不可能になる。確か各グループで上位二十名が突破だったか? 圧倒的な撃墜数を持った選手がいると残った選手は一点差で地獄を見る事になりそうだな」
「いや、その各グループの上位二十名という条件だが、それもあまり鵜呑みには出来ないかもしれんぞ?」
「……なに? どういう事だ?」
確か説明会ではそれぞれのグループから上位二十名を突破させるって話だったハズだが……変更される可能性があるのか?
「我々には各グループから……という説明だったが、それが事実とは限らないという事だ」
「……? 何故俺達審査官に嘘をつく必要がある?」
「わからんか? 我々の活躍次第では特定のグループでの点数がかなり上昇する可能性がある。つまり激戦区とそこまで激しい戦いが繰り広げられなかったグループとの上位二十名の得点には差が生まれるという事だ」
「……確かに審査官がどれだけ撃破されるかという一点だけでも得点にバラつきは出るだろうな」
つまり、百人で括られたグループ内では二十位以内に入れなくても、五百人と言う全体で括れば百位以内に入ってしまうという状況が発生するわけか。
「問題はこれが各グループ内での順位ではなく、五百人全体での得点で順位を決定する場合、我々にそれを正直に教えるか? という問題が発生する点だ。我々が戦いを煽れば煽る程、そのグループ内での競技突破者が増えるかもしれんのだぞ?」
つまり、俺達が頑張ってこのグループを激戦区にした場合、もしかしたら二十名以上の選手が突破してしまうかもしれないって事か。それはつまり、他のグループからの突破者がその人数分だけ減る事を意味している。そして、俺達が出るグループに俺達の身内はいないわけだから、割を食う可能性が高いってわけか。確かにそのルールを俺達審査官に教える事は出来ないだろうな。確実に反発にあうのが目に見えている。




