持ち込みの説明
「ああ。容量には限度がある。容量は無限じゃないし、転送するにも魔力を消費するから仮に無限の容量があったとしても取り出せるのは有限に収まるぞ」
「お前の中で挽き立てのコーヒーを飲むってのは、荷物への合理性よりも重いのか……? ……まあ、贅沢品に対して言う事でも無いのかもしれんが……」
贅沢品って時点で無駄も合理もあったものではないな。
「無論だ。こんな機会が今後再び訪れるかどうかもわからんのだからな」
まあ、こんな機会が一生に何度もあるものじゃないってのは理解出来るが。
「なら、コーヒーはそれで納得するとしてだ。……この寝袋は何のためにあるんだ?」
俺はオリヴィエが並べた道具の中から、今度は三つの寝袋を指さす。三つの内二つは新品であり、残りの一つは何度も使用された形跡がある。
「……シュラフに寝る以外の用途があると思っているのか?」
「寝るってお前……寝るタイミングなんていつあるんだよ……? これからすぐに競技が始まるんだぞ?」
どんなショートスリーパーだよそいつは?
「しかし、我々がこのテントから出るタイミングは敵がこの近くを移動している時だ。それまでは誰にも気づかれる事なく潜伏し続ける必要がある」
「それで寝てやり過ごすって事か? やり過ごし過ぎて寝てる間に競技が終わったりしたらどうするつもりだよ……?」
「まさか。そんなバカはおるまい」
「そこまでのバカはいないにしても、寝てたら敵の発見が遅れたり、見過ごしたりするんじゃないのか? 発見されるリスクを警戒するのもわかるが、そのリスクを恐れる立場でもないだろ審査官は」
今後の人生がかかっていると言っても過言では無い選手達ならば、確かに慎重に慎重を重ねた行動を取ってしまうのもわかる。……が、俺達審査官は別に負けてしまっても失うものは特に何も無いのだからあまり慎重になっても意味が無いように思うが。




