召喚されたモンスター
「帰りの分のコストを先払いで負担するというのはかなりキツイ制約だな」
「まあ、召喚される側だって損はしたくないだろうからな。しかし契約次第ではこの負担をかなり抑える事も出来る。それこそ召喚に必要な魔力を召喚される側からも捻出して貰えたりもするらしいぞ」
「そんな事まで可能なのか……」
「まあ、詳しい事は専門家ではないからわからんがな。それより、そろそろ召喚が行われるようだぞ?」
そう言いながらオリヴィエはミーシャの事を指さす。彼女の足元には徐々に魔法陣が浮かび上がりつつあり、そこから巨大なモンスターの影が這い出して来る。
「召喚……成功……」
「これは……モグラか……?」
ミーシャが召喚したモンスターはモグラによく似た姿をしていた。もっとも、大きさが比較にならない程だが。
「見た感じそうとしか思えんな。穴を掘る事を目的としているんだから、理に適った選択だ。問題は、こいつがモグラのように穴を掘るのが得意かどうかだな」
「当然、穴を掘る事に関しては圧倒的だよ。そもそも穴を掘って移動する生物が稀な事を考えたら比較対象なんていないけどね」
モグラらしきモンスターの上から声が聞こえる。モンスターの頭の上に乗っていたミーシャが俺達を見下ろすように話しかけて来ていたのだ。
「このサイズのモンスターを召喚したとなると随分と魔力を使っただろう? どれだけの時間使役出来る?」
「それなりの空間を掘り進める事しか考えてないからあまり時間は無いよ。さっさと掘っちゃうからちょっと待ってて」
そう言いながらミーシャはモンスターの頭から降りると、杖を前にかざす。モンスターは杖のかざす方向へと進んでいくと、そこで穴を掘り始める。
「凄いスピードで掘って行くな……! そんなに柔らかい土では無いハズだが……」
「このペースならすぐに終わりそうだね。掘り返した土はどうするの? このまま山積みだとバレバレだと思うけど」
「大砲を隠すのに利用しよう。迷彩用のシートで覆うつもりだったが、その上に土を被せればかなり発見されにくくなるハズだ」
「ふーん……じゃあ、このまま掘り進めるね」
モンスターはその後も穴を掘り続け、ある程度の大きさの空間を作ると、モンスターの足元に再び魔法陣が現れ、その中へ潜り込むように消えて行ってしまった。




