失敗は許されない
「せっかくの穴を塞いでしまうかもしれないというのは理解している。だがその時は別の場所に掘れば良いだけの話だろう?」
「俺達が穴の中に隠れるって点だけで考えればそれで良いが、まず最初に時間的な問題があるし、その上カモフラージュの問題だってある。そこら中に爆発の痕跡まみれのある場所に身を隠すって言うのか?」
最初は練習としても、まさか最初から失敗するつもりで穴を爆発で掘り進めたりはしないだろう。つまり、最初から条件の良い場所で掘り進める事になるハズだ。場所を移すと言っても条件の良い場所がそこら中にあるハズもないのだから、必然的に失敗した痕跡の近くで掘る事になる。良い場所を探す時間的問題もあるしな。
「……確かにそんな場所を発見したらその時点で警戒態勢に入るだろうな。そうなったら待ち伏せのメリットはかなり薄れてしまうな。だが、それではどうやって穴を掘るつもりだ? まさか競技が始まった後も穴を掘り続けるわけではないだろう? そんな事をしていたらそれこそ隠れる意味が無い」
確かにそんな事をしていたらどうぞ不意打ちしてくださいと言っているようなものだな。
「そもそもの要求がデカ過ぎるんだよ。魔力バッテリーだけ……それも一つだけに絞れば必要な穴の大きさはかなり小さいサイズに抑えられるだろう」
「一つは埋めるとして……もう一つはどうするつもりだ?」
「どうもしない。むき出しの状態で置いておく。元々、競技終盤になったら担いで敵を探し歩くつもりだったからな。埋めて隠すのはミーシャの方だけで十分だろう。ルール上俺が狙われる可能性は終盤になるにつれて低くなるからな」
残り時間が少なくなればなるほど倒しても得点に繋がらない俺との戦闘は避けたくなるだろうからな。
「そのサイズなら何とかなるか……そもそも貴様だとわかっているなら狙われないと考えるのであれば身を隠すのかえって危ないとも言えるかもしれんな。だからこそある程度は近寄ってもらうために身を隠すべきだと思っていたが……ミーシャ、お前はどう考える? 下手をすればお前の射程にすら近寄ってもらえない可能性もあるが」
「……私なら、穴を掘ってその中にテントを立てるね。召喚魔法を使えば、洞穴の一個や二個くらいならすぐにつくれるよ」
召喚魔法か。穴を掘るのが得意な生物を呼び出すと言うのか。しかし、テントが丸々一つ入る程の大きさの穴となるとかなりのものになると思うが……しかも一人用ではなく複数人用のテントだ。そんな重機よりも早く穴を掘れる生物なんて召喚できるのかミーシャは。




