穴を掘る方法
「これさえあれば私達はテントの中に隠れながら外の様子を見る事が出来るわけだ」
「それは凄いな。すぐに設置しに行こう」
「いや、設置する前に一つだけ注意する事がある」
「なんだ?」
オリヴィエの言葉に俺は聞き返す。
「水晶の通信距離だ。これだけだと大した距離にはならない」
「具体的にはどれくらいなんだ?」
「条件が良ければ300メートル程度までなら映像を受信できる。専用の装置を用いれば倍以上にまで伸ばす事も可能だ」
「特に問題があるようには思えないが……」
「問題はある。この手の装置は増やせば増やす程カモフラージュが難しくなると言う点だ。そしてさらに問題を一つ挙げるとすれば、私にはこれらを上手く設置する技能が無いという点だ」
なるほどな。送受信する装置にしてもその波長にしても、高出力になればなるほどバレやすくなるわけか。
「いきなり暗礁に乗り上げたな。離れれば離れる程気付かれやすくなるわけか」
「そういう事だな。しかし近くだとそれはそれでバレやすくなる」
「なら、バレる前提で待ち伏せするしかないな」
「それにも問題がある。今回私達がターゲットとすべき選手はそれくらいの射程距離を持っていてもおかしくない実力者だ。つまり、テント越しに攻撃を受ける可能性が出て来る」
テントごと攻撃を食らう可能性があるわけか。
「……幸い、障壁があるからその一撃で一網打尽って事にはならないとは思うが……先制攻撃を受けるんじゃおちおちテントで休憩する事も出来ないな」
「その通りだな。だが、それはテントを張る場所にもよる。開けた場所は論外にしても、雑木林の中なら比較的バレにくくはなる。地中ならもっとだ」
「……穴を掘ってその中にテントを張るって言ってるのか? そんな空間を掘るのにどれだけの時間がかかるかわかってるのか?」
仮に重機が使えたとしても数時間はかかるんじゃないのか? 人力じゃ間違いなく競技開始までに間に合わないな。
「穴を掘るのであればかなりの労力と時間を必要とするだろうな。だが、穴を空けるだけなら、一瞬で終わらせる事も可能だ」
「……爆破するつもりか? 木も土も吹き飛ぶんだからバレバレになるんじゃないのか?」
「地表で爆発させたらそうなるだろうな。だが、ある程度の穴を掘ってしまえばそうはならんだろう。実際に洞窟を掘るのに爆弾を用いると聞いた事があるしな」
「聞いた事はあるって……やった事は無いのか? 火力を間違えたら崩落事故を起こすぞ。せっかく掘った穴を爆発で埋めてしまう可能性があるって事だ」
穴を爆発でさらに広げるのが目的だが、周囲の土を吹き飛ばしているわけだから、その土がかえって穴を塞いでしまう可能性もあるわけだ。実行に移すには専門家の緻密な計算が必要にあるハズだが……何か当てでもあるのか?




