結局のところは二者択一
「ここなら身を隠せるんじゃないか?」
俺は周囲を散策した結果、丘の頂上よりやや下辺りの場所を指さした。
「ここか。周囲への見通しは悪いが……逆に言えば見られる可能性も低いな」
「ああ。周囲を見渡すだけなら頂上に陣取れば良いが、そこだと全ての方向から発見される危険性があるからな。全ての方向に対して警戒する事が出来ない以上、この丘は遮蔽物として利用した方が良いだろう」
一応、丘の頂上に陣地を作られたら高低差の関係から不利になってしまうが、待ち伏せするという作戦を立てた以上は見つからないという前提で策を進めるべきだろう。
「確かに壁の役割を果たしてくれそうだ。山肌を貫いて攻撃が飛んで来ない限りは背後から不意を突かれる事もないだろう」
「まあ、頂上から攻撃を受ける可能性は残るが、そこは割り切るしかないな」
「その点に関しては何も手が無いというわけではない。元々空中からの急襲をするつもりだったからな。一度上空まで飛翔する事さえ出来ればそこから頂上へ向かって垂直に攻撃を仕掛ける事も出来る。それにそこからなら拠点に帰還するのも楽だしな」
「確かに平原にいる敵を倒してからここまで戻って来るには、一度坂を上るか空を飛んで戻って来る必要があるな。それに対して攻撃目標が頂上なら、攻撃が終わったら滑空なりして戻って来る事が出来るわけか」
一度降りてからこっちに上って戻って来るのと、攻撃後坂を下りて戻って来るのとでは帰還時の危険性が違う。攻撃に失敗した状態で拠点に戻ろうとすると、確実に敵に背を向けながら坂を上る事になるからな。これは危険と言わざるを得ない。
「そういうわけだ」
「だが、上昇する時が危険だな。上からなら拠点の位置を特定されて集中砲火を受けるんじゃないのか?」
戻って来る分にはらくだが、逆に上昇する際にはかなりの危険を伴う事になるハズだ。結局のところは、攻撃を仕掛けるまでが大変か仕掛けた後が大変かのどちらかというわけだ。




