転送後の会話
「ここか……どこか身を隠せそうな場所を探すぞ」
薄暗い地下から一気に太陽の光が照らす昼の大自然へと転送が無事完了した。
「……ああ。ちょっと待っていろ」
オリヴィエは眩しそうにしながらも周囲を見渡す。急に明るさが変わって慣れないのだろう。
「荷物が運ばれてくるハズだけど、移動して良いの?」
「それほど遠くまで移動するつもりでも無いし、大丈夫だろ」
ほどなくして、俺達が転送されてきた地点と同じ場所に魔法陣が浮かび上がる。その後、数秒も経たないうちに荷物を持った係員らしき男が姿を現した。
「お待たせいたしました。お求めのシャベルにございます」
「早いな。他にも私達と同じ考えの者がいたという事か……」
確かに、突然要求された物に対してのレスポンスが早い。恐らく前もって準備していたのだろう。
「荷物の受け渡しのついでで恐縮なのですが、第二競技開始までまだ時間がありますので会場へ移動する事も出来ますが……いかがなさいますか? 勿論、競技開始まで準備に費やしていただいても構いませんが……選手達の様子を伺う事も出来ますよ」
「どうする? 選手の様子を知る機会だが」
「悩ましいところだが、この場に残った方が良いだろうな。身を隠す場所だけでなく荷物を置く場所も考えなければならないしな」
ここで出来る事や向こうで出来る事を総合して考えた結果、俺達はこの場に残る事にした。
「では、私はこれで。これ以降、大会運営からの接触は競技終了までございません。情報は放送で一方的にお伝えするのみとなりますので予めご了承を。念のため、もう一度ご確認しますが、お求めのアイテムはこちらだけでよろしいのですね? 水分補給のためのお飲み物や競技終了まで体を休めるためのテント等もございますが……」
「その必要は無い。こちらの方で用意は出来ている」
「そうでしたか。それではご健闘をお祈りします」
それだけ告げると、係員は再び転送魔法でどこかへと移動した。
「さて、私達も身を隠す場所を早く決めるか。テントを張れれば、それだけ体を休める時間を増やせるからな」
そう言いながらオリヴィエは周囲を散策し始める。限られた時間の中だとテントを張るだけで競技開始の時刻になってしまいそうだ。これはかなり効率的に動く必要がありそうだな。




