必要な物
「お待たせしました。どちらへ転送なさいますか?」
「この場所へお願いします」
俺は係員に地図を見せながら希望する場所を指さした。
「了解しました。転送先にこちらから補給物資をお送りする事も出来ますが、いかがなさいますか?」
「だ、そうだが……どうする?」
「恐らく必要無いだろう。……いや、もしあればだが、シャベルを送ってもらいたい」
「シャベル? そんなもん、何に使うんだ?」
突然、妙なものを要求するオリヴィエに、俺は思わず聞き返す。
「無論、穴を掘るためだ」
「いや、それはわかってんだよ。なんのために穴を掘るんだって話だ。まさか、身を隠すためか?」
もしそうなのだとしたら、かなり無茶な作業になる。シャベルで穴を掘るスピードなんてたかが知れているからな。競技開始時間までに間に合うかどうかってところだな。
「そこまで深くは掘らん。これを埋めるだけだ」
そう言いながらオリヴィエは俺達が運んできた魔力バッテリーを指さした。
「これを埋めるのか? 地面に?」
「ああ。こんなデカい物、他に隠しようがないからな」
「隠すのは良いが、持ち運ぶって時に不便じゃないか? ……いや、持ち運ばんか」
完全に機動力を失うが、待ち伏せに徹する作戦だからな。特に問題は無いか。
「隠せそうな場所があれば良いが、もし見つからなければ相手選手にこちらの居場所がバレバレになるからな。穴を掘って埋めるだけでも効果はあるだろう。それに、こういった物を地面に埋めて隠すというのは実戦でも良くある事だからな」
「そうなのか」
「ああ。隠すという効果だけでなく、敵から攻撃を受けた場合でも埋めておいたおかげで被弾を免れる事も多いらしい」
なるほどな。攻撃を受けにくくなるのか。
「では、転送した位置にお求めの物をお運びいたします」
そう言いながら係員は魔法陣を起動した。




