出会えたらむしろラッキー
「突然現れて優勝をかっさらって行く選手か。そんなのどうやって見分けるんだ? 出来たら誰も苦労して情報収集なんてしないな」
「そりゃあ直感というものだろう。……残念ながら私にそういった才能は無いがな」
「俺だってねえよ……」
前の大会でもそうだったが、基本的に対戦相手に対しては事前情報ありきで戦っていたからな。あの連中全員の実力を見ただけで判断しろと言われたら……ろくな精度じゃ測れないだろうな。
「まあ、安心しろ。確率的にそんなのと出くわす事なんてないだろうし……むしろ私達を一瞬で倒せるような選手と出会えたらラッキーだ」
「ラッキーかそれ? ……いや、まあ、ラッキーだろうな……」
「そうだろう? 何せ私達が出るグループに私達の知人はいないんだからな」
無差別に片っ端から倒してくれるんなら、そのグループ内にいるトップ層ももしかしたら一瞬で倒してくれるかもしれないわけだからな。一位は逃すかもしれないが、上の順位の椅子はそれなりに空くかもしれん。
「逆に、俺達のいないところで途轍もない天才が出現したら最悪だな。そいつが暴れ回るのを指をくわえて見ているしか出来ないんだから」
技術介入の余地も無く競技を終了されたらどうする事も出来ないわけだからな。
「それに関してはもう諦めるしかないな」
「運が無かったってわけか。まあ、そのおかげで案外実力以上の順位に行けたりするかもしれんから、そっちに転んでくれる事を祈るしかないな」
トップ層がいきなり倒れてくれたらその分チャンスは回って来るわけだからな。俺達もそのつもりで相手選手を倒すつもりだから、同じ考えの奴は他にもいるだろう。まあ、国が被る事が無いのであれば、審査官が選手を庇うって事は無いだろうから審査官同士での潰し合いは起きないとは思うが。
「お待たせしました。移動になりますので係員の案内に従って移動をお願いします」
係員が部屋に入って来て審査官達に移動を求めた。いよいよ俺達の出番ってわけだ。




