実際に存在するのか
「長距離攻撃が出来る魔術師がいるのは事実だが、無条件で出来るってわけでもないわけか。……とは言え、複数人が協力し合えば十分あり得るって事でもあるんだろ?」
「そうだな。単独での難易度は極めて高いが、実力のある魔術師が手を組めば比較的容易に実現可能なものではある」
結局のところ、警戒しないわけにはいかないって事になるな。
「遠くから位置を特定されたら一方的に攻撃を受け続ける危険性が高いってわけか。しかも競技のルールは障壁の破壊だろ? 下手したら秒で削り落とされるんじゃないのか?」
「最悪の場合、そういう事になるな。極論を言えば、競技開始直後に無差別で広範囲攻撃を仕掛けられたらほぼすべての選手と審査官がなすすべなくそのまま撃破されてしまうというオチまであり得るぞ」
確かに極論を言ってしまえばそれだけでゲームセットだな。身を隠すとかそういうレベルの話じゃなくなる。
「現実的に考えて、それが出来る魔術師ってのは存在するのか?」
「可能不可能の二択なら可能だな。本当に優勝争いをするようなレベルの選手ならそれだけの規模の攻撃を仕掛けて来る事もあるだろう。……まあ、本当にそんな戦い方をする選手がいるのかどうかはわからないがな」
「初日から無茶をする必要は無いだろうからな。それどころか、翌日に悪影響が出るリスクもある。それこそ初日のこのタイミングでどうしても倒しておきたい選手がいない限りは体力を温存する事を優先するだろうな」
そいつさえ倒せてしまえば後は優勝確実というような相手と戦うとかでもない限りは無理して戦う理由は無いだろうからな。そして仮にそんな奴がいたとしても、積極的に戦おうとはせずに他の選手と戦って疲弊したところを攻撃しようと考えるのが大半のハズだ。そういったまともな戦略とは真逆の戦いだな。広範囲への無差別攻撃と言うのは。
「普通に考えればそうだが、その普通の考えでは到底理解出来ないのが優勝者というものだ」
「……で、それをやってきそうな選手は俺達の出るグループ内にいるのか?」
本題はそこだ。いるのであれば警戒するしかない。
「安心しろ。優勝候補達の実力は甲乙つけがたい程に拮抗している。そこまでの無茶をする選手はいないだろう。……今年初出場してそのまま優勝してしまうような選手だったらやりかねないがな」
完全に無名のダークホースか……そんなのは警戒のしようが無いな。そういう手合いの奴はいない事をいのるしかなさそうだ。




