炊き出しできない理由
「そりゃあ弁当にもなるだろ。ここの職員と同じものしか用意出来ないだろうからな」
「ん? そういうものなのか?」
これから自分達が食べる弁当と、係員が食べる弁当が同じだろうと推測する俺の発言に対し、オリヴィエは少し不思議そうに聞き返して来る。
「ああ。俺達の存在が外部に漏れるわけにはいかないからな。運営の職員の人数をかさ増しして外注するしかない。……もっとも、これは別に嘘をついているってわけでもないがな」
一応、俺達も運営から招集を受けてここに来ているわけだから、職員や係員は盛り過ぎにしても嘱託くらいの扱いにはなるだろう。
「なるほどな。だが、外注というのは何故……あー……いや、箱を見ればわかるなこれは」
そう言いながらオリヴィエは弁当の蓋に印刷されたロゴを見つめる。
「まあ、それを見なくても想像はつく。……と、言うより、こういうイベントで飲食物を運営の係員が炊き出しするってまずありえんからな。経済効果やらを考えたら店が黙って無いし……経費削減としても本当に効果があるのかどうかわかったものじゃないしな」
「確かに街中のお弁当屋さんが営業をかけてくるのは想像に難くないな。それに自前で炊き出しするにしても、衛生管理やその他諸々のクリアしなければならないハードルの存在を考えれば、最初から専門家に丸投げしてしまった方がかえって安く済むだろうな」
さらに加えて言えば、大会を開いている会場という、間違いなく人口が密集する事がわかっている場所に調理場所なんていうデッドスペースをわざわざ作るのかって問題も発生する。そんな事をするくらいなら、もっと他の場所で弁当を作って運んできた方が良いだろう。




