団体行動の理由
「会場へはちゃんと案内してくれるのか……まあ、そうしないと、会場へ行くまで競走になりかねないからな……」
「そう考える選手もいるだろうな。罠を仕掛ける……なんて強硬策に出る選手は流石にいないとは思うが、現場の下見はやった方が良いだろうし、選手と協力関係にある誰かが一足先にやって来て情報を手渡ししてくる可能性もあるしな」
「五百人全員の自由行動を全員分監視するなんて非現実的だからな。そもそもそれを禁止行為とするのにも様々な規約を作って署名してもらう必要が出て来るからな……そんな手間をかけるくらいなら最初から五百人全員を一か所に集めさせておいた方が良い」
自由行動を許せば、いったい何をしでかすかわからないような連中のハズだからな……可能な限り監視の目を光らせておいた方が良いのだろう。もっとも……それがどこまで効果的かは知らないがな。
「休憩時間中と言う限られた時間の中だとは言え、知り合いとの接触を禁じるなんてルールはとてもじゃないが作りようがないからな」
「今のこの街の人口密度やら人数やらを考えたら、五百人全員が知り合いと出会わない確率の方が低いだろうな」
「それもあるが、それ以前に選手同士が知り合いと言う可能性も普通にありえる話だ。そういう点を考えればとてもじゃないが成り立たないルールだな」
確かにそれは不味いな……運営が五百人分の個室を用意しなくちゃいけなくなりかねない。
「そもそもこの大会で知り合うという状況がある以上、何年間か継続的に出場している選手ほど不利になるな」
「そうなったら批判は現在の比では無くなる」
「結局、自由行動を無くすという方向に動かざるを得ないわけか」
何か問題が起これば責任問題になるからな。運営だって無意味に責任なんて背負いたくないだろうし、選手をルールでガチガチに縛り付けるしか他に方法が無いだろうな。




