侵略の目的
「……まあ、どういう理由があるにしても、侵略してくるからには何かしら欲しいものがあるハズだからな……欲しいものが何もない不毛の土地に用は無いだろうな。……そもそも魔王って何が目的で侵略してきたんだ?」
俺は素朴な疑問を口にした。魔王が地上を侵略しに来た……という話を漠然と聞き入れていたが、そもそもの動機を聞いていなかったからだ。
「ん? それは……人間界の支配だろう」
「いや、それは目的じゃなくて手段……と言うか目標だろ。支配下に置いて何がしたかったんだって話だ」
「そりゃあ……好き勝手やりたかったんじゃないのか?」
「……目的そのものは明かされてないのか? 魔王との戦いで勇者様辺りが聞き出したりとかはしなかったのか?」
理由を聞いて理解出来るかどうかはともかくとして、一応聞くだけ聞いておきたいのが人情だと思うが。
「私の知る限りでは、人間界を支配したい……という話しか出ていないハズだ。支配下に置いて何がしたいかは……私も聞いた事が無いな」
「……まあ、魔王から支配したいなんて発言を聞いた時点で話し合いは終わりって事にもなるか……」
少なくとも人類とは相容れない主張になるだろうからな。
「だろうな。そもそもの話、勇者様御一行が魔王を倒すべく旅に出発した時点で大陸内の人類は壊滅的ダメージを受けていたからな。そこから多少の復興はあったにしても、魔王を倒さずして人類の安寧はあり得なかったわけだから……話し合う余地は最初から無い事になるな」
「まあ、人類側からすりゃ駆除できなきゃ自分が絶滅するって切羽詰まった状態なんだから話し合いなんてやってる場合じゃないだろうが、魔王を倒した後だって魔界に魔物はいるわけだろ? そこら辺の対処法だとか、新しい魔王が誕生して再び侵略してくるかも……とか、そこら辺の調査はしなかったのか?」
「その調査をするのにいったいどれだけの予算が必要になると思っている? 伝説の勇者様御一行でさえ、長期間に渡る滞在はしなかった……出来なかったのだぞ? 調査発掘するための拠点造り……拠点を建設するための情報収集……情報を集めるための下見……下見するまでのコストやリスク……ここ最近になってようやく拠点が作れたと言う段階なのだぞ? 調べるなんて不可能だ」
勇者様御一行でさえ知りえない情報を集めるとなると、かなりの労力が必要になるって事か。




