何百年も使われ続ける製法
「流石の魔王軍も、転送魔法の出入り口は物理的に建設しなければならないっていう構造的な制約には従うしかなかったわけか」
「まあ、火属性魔法が使い手の才能次第で水属性魔法になるかと言ったら、そんな事は絶対にありえないわけだからな。そういう意味では制約に従うしかなかったと言うよりは、他の制約で実現可能な代替魔法を発明出来なかったと言った方が正確だろうな」
「火属性魔法を水属性に変換するくらいなら、最初から水属性魔法を習得しろってわけか……まあ、そういう話になるだろうな」
「ああ。問題があるとすれば、現代においても転送魔法には出入り口を建設した方が効率が良いという結論が出ているというところだがな」
何百年間も基本的な構造が変化していないって事か。それだけ既存の魔法の完成度が高いって事でもあるのだろうな。
「やはり、決められた魔法陣から魔法陣へワープするというのが一番楽なのか」
「少なくとも座標の特定は一目瞭然だからな。変な計算や定義も必要ない。単に『AからBへ移動』という処理を行っているだけだ。これ以上の簡略化というのは……想像もつかないな」
なるほどな。出入り口を作らずに物体を転送させるには、AだとかBだとかみたいな目印無しに物を移動させるようなものか。個人の旅行レベルならそれでも何とかなるかもしれないが……物流やインフラレベルで利用する事を前提に考えたら論外の運用方法になるな。
「そりゃあ、何百年も変わらないわけだな。じゃあ、まずは最初に誰かがその場所に辿り着く必要があるわけだな? そして、それが出来なかったせいで魔王軍の進軍範囲には事実上の制限が出来ていたと」
「ああ。ミーシャの国への移動経路は、陸路は私の国が塞いでいたし、海路は北側は極圏になるから魔王軍でも進行不能。南側を通るか、空を通り過ぎるしかないわけだ」
一応、侵入経路そのものは存在するのか。当時の人類の状態を考えると、制空権や制海権をどれだけ握っていたかは甚だ疑問な部分があるから、辿り着けさえすればそのままワープゲートの建設まで漕ぎ着けていた可能性は高そうだな。




