魔王軍の侵略範囲
「もっと別の土地と言うと……さらに遠い場所……それこそ別の大陸とかか」
「だろうな。魔王の侵略と言っても、世界全域に影響を及ぼしたものではない。……まあ、そうなっていた可能性はあるがな」
世界全域に魔王の魔の手が迫る前に倒したってわけか。
「一応、世界どころか大陸全土を舞台にした戦いってものでも無いわけか……もしかしてだが、魔王だとかそういった類の存在をそもそも知らないって人間も意外と多かったりするのか?」
「完全に知らない。……と、言うのはこの辺りでは殆どいないと断言しても良いだろうが……より離れた土地ではどこまで知れ渡っているかは甚だ疑問だな。ミーシャの国なら、知らないという者も少しはいるんじゃないか?」
「そうなのか?」
「どうかな? 物語としてはかなり有名だし、完全に知らないって人はいないと思うけど……魔物の被害なんて一切受けてないような、主戦場だった場所よりもっと遠くなら知らない人がいるかも」
オリヴィエからの問いかけに、ミーシャはそれとなく答える。
「お前の国まで行くと、魔王軍もやっては来なかったのか」
「陸路は完全に足止め出来ていたからな。空路を通れる魔物は限られていたし、残る侵入経路は海路くらいのものだ。後は転送魔法だが……座標の固定を行うにはその土地をより詳細に調査する必要があるからな。結局は最初にその土地にある程度の部隊を派遣する必要があるわけだ」
完全に誰も辿り着いた事の無いような場所に直接ワープするって真似は出来ないのか……まあ、それはそうか。そんな事が出来るんなら、魔王軍も人類も、もっと頻繁にお互いの領地に侵入して暴れ回る事が出来るハズだからな。これは人類同士であっても同じことか。
「なるほどな。自由に出入りするためにはまず出入り口を作る必要があるわけか」
「そういう事だな。そして、その出入り口を作るというのが案外難しいわけだ。技術的に進歩してきている現代でさえもかなりのコストがかかる事業だというのに、ましてや何百年も昔ともなればその難易度はさらに跳ね上がる事だろう」
という事はつまり、魔王軍は本当に何の前触れも無く突然現れたってわけでもないのか。何らかの方法で海の向こうにある人類の住む大陸まで辿り着いてから転送魔法のワープゲートを建設したというわけだ。




