勇者様が助け出した後の村や街
「……現実問題として、魔王直々に侵略行為を行ったという事実はあるのか?」
「事実があるのかどうかは知らんが、その手の逸話に関しては確認はされていないな。それが無実なのかそれとも発覚してないだけなのかはわからないがな」
確かに……魔王が現れて直接侵略を行っても、そこにいた人々が皆殺しにされて生き証人が一人もいなくなってしまったのであれば、語り継がれる事も無いだろうしな。
「まあ、無いと考えるのが妥当か。その方が変なリスクも避けられるしな」
「そのおかげかどうかはわからないが、人々は僅かながらだが復活の兆しを見せ始めたようだ」
「だが、勇者様に助けてもらった後も大変だろう? 復興作業も山ほどあるだろうし、再び侵略してくるであろう魔王軍を撃退しなきゃいけないんだからな」
いかに伝説の勇者様御一行とは言っても、たった四人だけで世界の全てを守るというのは現実的じゃない。だからこそ原因の根本である魔王を倒そうという話になったのだろうからな。つまり、勇者様一行がいないところの防衛はかなり困難を極めたハズだ。……と、言うより、むしろ魔物の方だってわざわざ勇者がいる時に襲撃は仕掛けないだろう。いない時を見計らって襲い掛かるハズだ。
「いや、それなんだが、伝説の勇者様御一行が助け出した街や村が再び魔王軍に襲われると言った事は無かったらしいぞ」
「なに? 一度解放した町は再び狙われる事は無かったのか?」
「ああ。どういうわけかずっと安全だったようだ。再び戦力を送る余裕が無かったのか、戦略的にそこまでの価値を見出さなかったのかはわからんがな」
戦力が足りないって事は無いよな……? 戦略的な価値については良くわからんが……完全に放置ってのも変な話だ。
「復興している真っ最中の村に魔物が襲い掛かってこなかったのか? なんでそんな事になる……? 周囲に魔物はいたんだろ? それとも勇者様一行が根こそぎ皆殺しにしていたのか?」
もはや魔物が物理的に根絶やしにでもされてない限りは成り立たない現象だぞ? ……それとも、魔物の方にも厭戦感情が漂っていたのか? 魔王からの命令に嫌々従って無理矢理戦わされていたのであれば、命令が無くなった後で人のいない奥地へ逃げ込むって事も考えられる。それがずっと続いていたってのも不思議な話だが。




