確認してから団結
「そんなに国が滅ぶような事があったのか……」
「まあ、国が滅びる要因は国家間同士の戦いだけでは無いからな。その中には当然、魔物からの被害というのも含まれる」
「最初期は魔王軍に侵略されてたって話だからな……それで滅ぼされてた可能性もあったわけか」
人間同士の争いだけでなく、魔物なんていう存在からの襲撃もあると考えれば、国が滅ぶ危険性は常に存在しているようなものか。……だとすれば、人間同士で争っている場合ではないんじゃないかと思わなくも無いがな。
「あの時代は国どころか、人類という種が存亡の危機に瀕していたからな。少なくともこの大陸上の人類は壊滅的な被害を受けた可能性が極めて高い」
「いかにその魔王が倒されたからと言ってもだぞ? そんなヤバいのが存在している事が確定しているのを理解した上で良く人類同士で争ってられるな?」
「それは仕方のない事という奴だ。確かに魔王が人類に対して侵略を仕掛けてきた時は人類は団結出来たが……そんなレベルの脅威が人類を襲いかかるなんて出来事は滅多に起きないからな」
まあ、そんなレベルの怪物が定期的にホイホイと出てきたら国が安定して発展するなんて夢のまた夢だって話になってしまうからな。
「一応……人類全体の脅威に対しては、人類は団結出来るという歴史的事実があるだけまだマシって感じか。次も同じように団結出来るかどうかは知らんが……」
「次か。もしも今後また魔王軍と同規模の軍団が明確に人類を攻撃して来たら、今度こそ危ないと言われているな。と、言うより、厳密には次も何も、最初の段階で人類は一致団結出来ていなかったからな」
「団結出来ていなかった? どういう事だ?」
普通、人類全体を脅かすような存在が現れたら人類は団結するものじゃないのか?
「どういう事かと聞かれれば、そのままの意味だ。そもそもの話、因果関係を考えればわかると思うが、人類全体の危機を前にして人類は団結したわけなのだが……問題なのはその人類全体の危機というのを誰がどうやって確認するかという問題があるわけだ」
「確認……?」
「そうだ。つまり、魔王軍で言うなら、魔王軍が人類を滅ぼしかねない程の大戦力だという事をどうやって認識するのか、という問題だ。実際に魔王軍が人類を滅ぼしかねない存在だと認識されたから、人類は団結出来たわけだが、逆に言えば、人類が団結したのはそう認識される程の被害を出してからの話だ。それまでは、一つの国が全力で対処すればどうとでもなるだろうと思われていたのが初期の段階だったらしいぞ」
初見じゃ敵の強さやヤバさはわからないだろうからな……危険度を低く見積もって本気で対処しなかったのか。危険性に気が付いてから対処して間に合ったから良かったものの、場合によっては気が付いた時点で完全な詰みだった……という状況に陥っていた可能性もあったのか。




