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崩天蛇神の秩序維持  作者: てるてるぼうず
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無駄足?

「うん! それじゃあ掃除も終わりね」


 やっと掃除が終わった。


「二人とも、今日はご苦労様! お礼に今日は晩御飯奢ってあげるわ」

「「今日は用事があるので結構です」」


 同時に答えた。


「そ、そう? それは残念ね。……即答しなくてもいいんじゃない?」


 残念から次の声が小さくて聞き取れなかったが、あまり重要なことはいってないだろう。


「あの、用事とは何なのでしょう?」

「うん? まあ、色々だな」

「具体的にどんな事なのですか? 私には教えられない事なのですか!?」


 出来れば教えたくないな。多分だがこいつは隠密行動に向いていない。髪の毛赤いし、炎吐き出すし。


「教えても良いが知る必要はないことだ。お前を連れて行くつもりはない」

「では、お二人でどこかに遊びに?」


 遊びに行く訳ではないが、まあそれでいいか。

 いやダメだ。生徒会室で夜遊びします宣言は面倒なことになるな。なにか適当なことで誤魔化さなければ。


「ああ、こいつ今日俺の家に泊まることになってんだよ」


 おいおい、天才かよこいつ。


「お泊まりですか。他にもあるような口振りでしたが」

「それはそうだろう。他にもあるんだから。ここら辺の散策もしたいしな」

「私もご一緒したいです」


 しまった。これは言うべきではなかったか。


「また今度な」

「嫌です! 今日が良いです!」


 やけに食い下がるな。


「我が儘を言うな。それにもうそろそろ暗くなる、迷子になったらどうするつもりだ」

「子供扱いしないでください! 私はもう立派な大人の女性です!」


 顔を真っ赤にして怒っている。そういうところが子供だというんだが。


「そうか、じゃあ大人の女性は兄と一緒に散歩になんか行かないよな?」

「それは! ……それは、……やっぱり子供で良いです……」

「そうか、じゃあ寮でいい子にしているんだぞ」

「はい……あれ?」


 よし、うまく丸め込めたな。

 一度寮に戻って準備を整えるか。

 その後、駅に向かおう。


◆◆◆◆◆


「ゲイル、遅かったなギリギリだぞ」


 駅で待っていると、出発時間ギリギリになってゲイルがやってきた。


「すまねぇ、色々あってな」

「まあ良いさっさと乗るぞ」


 俺たちは列車に乗った。

 ちなみに俺たちが乗る列車は一見するとただの蒸気機関のように見えるが、実際のところはマナによって動力を確保しているため、魔導機関列車という表現になるようだ。そもそも動力源がマナである以上、蒸気機関車も電車もどの属性魔法を利用しているか、ということに依拠する。

 結局何が言いたいかというと、色々な種類の列車が並んでいるということだ。


「いつ頃つくんだ?」


 俺はゲイルに質問した。窓際なら風景を楽しむのもありだったが、生憎と通路側に座ることになったからだ。時間によっては一眠り出来るだろう。


「だいたい二時間以内だな」


 実に微妙な時間だ。眠っていたら、乗り越しそうな時間だ。こんなことなら本も何冊か持ってくればよかったな。


「暇だな……、何か暇つぶし出来るもの持ってるか?」

「持ってるわけないだろ、遠足に行くんじゃないんだぞ!?

「まあ、慌てるなって」


 俺はゲイルをいさめる。こんなところで頭に血が昇っていると、いざという時熱くなりすぎる。


「なんでそんなに余裕なんだよ? そもそも今向かってる方なんて本当に誘拐されてるのかどうかもわからないんだぞ? もうすでに誘拐犯を倒しているかも、いやその可能性の方が高いんだぞ?」

「その理屈なら、麗しのお姫様だってもう解放されている可能性があるだろう。国が全力を懸けて解決しようとしているんだぞ?」

「それはそうかもしれないがな」

「まあ、深いことはノートン伯爵邸に着いてから考えよう。わからないことに関して深く考えても、堂々巡りするだけだ」


 それまで、駅に着くまで俺たちは二人とも黙り続けた。

 そして、駅につき、外にでる。

 学園のある所と違い、都会と言うよりは郊外という表現がしっくりくるような場所だ。

 俺は地図を開き、ノートン伯爵邸まで二人で歩いて行くことにした。

 そして、伯爵の領地が見えてきた。相当でかい森林が塀で囲まれており、その内側が個人の所有物であることを物語っている。

 俺たち二人はとりあえず話し合うことにした。


「どう思う?」

「とてもじゃないが人質が捕らわれているような雰囲気じゃないよな? やっぱり無駄足だったんじゃないのか?」

「かもしれないな、もう脱出した後のように思う」

「それなら無駄足だったってことで、さっさとミリア姫を助けにいこうぜ」

「まあ待て、その前に門番に確認しよう。姫を誘拐したかどうか」

「は!? 教えてくれるわけないだろ!?」

「普通そうかもしれないが、もし俺たちが何か手掛かりを持っているとしたらどうだ? 何らかの反応があるはずだ。相手にそう思わせればいい」

「なあなあなあなあ、俺が思うにお前向いてないよな? 嘘をつくとか、そういうことに関して」


 確かに、正直言うと、俺はうそをつくのが下手だ。

 まあ、気にせず門番に話し掛ける。


「おっと、門番のお二人さん、こんな綺麗な星空の見える夜に見張りとは日頃の行いが相当悪いみたいですね?」

「なんだボウズ、こっちは暇じゃねーんだ」

「そうだ、それに日頃の行いが良いから晴れた夜に見張りが出来るんだ」

「なるほど! 確かにその通りだ。しかし、あまり邪険に扱わないほうが良いですよ? 実はご婦人から上等なコニャックを渡されましてね。あなた方お二人に……え? 身に覚えがない? そりゃあそうだ、覚えがあったらとっくにナンパして振られているはずですからね」


 そう言いながら俺は懐から酒の入った瓶を取り出す。

 ちなみにこの酒は仕事仲間から贈られてきた物で、『入学祝い』と書かれていた。学生寮に酒を送るあたりに同僚達の空気の読めない感じが滲み出ている。ついでにご婦人から貰ったというのも嘘ではない。


「おい、一言余計だぞ!」

「馬鹿、お前は俺のおこぼれを頂戴する立場だろうが」

「何言ってんだ! あんた既婚者だろ!」

「バッカお前、このナイスミドルの魅力がわからねぇのか」

「はぁ!? ただのスケベ親父が何言ってんだ!」


 お、良いワードが出たな。


「スケベといったらここの主も最近女関係で痛い目に遭ったらしいね?」

「ああ、あの伯爵、攫おうとした女の部屋を間違えてとんでもないことになったらしいな」


 間違えた? ボルドフ姫は予定外だったのか?


「自業自得だろ、一国の姫を拐かそうとしたんだからな。とは言っても執事の話じゃスケベ目的じゃないらしいぜ?」

「当たり前だろ、でなきゃあんなグリズリーみたいな女……」

「そっちじゃねえよ! ミリア姫の方だ、先を越されたとかいってたぜ?」


 ……! 変な所で繋がったな。


「は? 行方不明だろ?」

「本当に馬鹿だな、素直に誘拐されましたなんて報道させるわけないだろ。何にしてもどっかの誰かは上手くやってこっちは貧乏クジを引かされた訳だ。今もグリズリーの世話に大忙しだそうだ」


 どうやら、まだ捕らわれの身のようだな。


「へえ? 一度で良いから見てみたいものだな、そのグリズリーに」

「ああ、なんでも金持ちなら喜んで差し出すってよ。伯爵もグリズリーの世話は懲り懲りらしい」


 なんだ? 普通に会えるのか? まあ、本命が手に入らなかったとはいえ、せめてものリターンが欲しいということか?

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